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企画部屋
燭台切光忠の話
燭台切光忠の審神者界での肩書きは、主に「オカン」である。世話好きな性分や料理の腕など、数え上げればキリがない。
死織の本丸の彼もそう変わらないが、1つだけ違いを挙げるならば―――彼ば兄゙であることに徹していること、くらいだろうか。

―――最初に聞いた言葉、最初に見た笑顔、最初に聞いた過去。全部全部、覚えている。
僕達と君の「初めて」を、僕は折れるまで、覚えているだろう。
君の笑顔を守る。そのためならば、手段を選びはしないから。………だから。
お願いだから、そんなに傷付こうとしないでほしいんだ。

「………主」
「ふえぇ、ごめんなさい……」
遠征から帰ってきて早々薬研くんに呼び出され、主のことを聞いた。しばらくは出陣に着いて行けないほどの傷、どんな状況だったのか。
「出陣した顔ぶれは?」
「えっと。隊長が青さん、残りが乱ちゃん、長谷さん、うぐさん、しーさん、たろさん」
「ごめん、過保護で固めたのは意味があるの?」
「くじ引きしたらそうなったんや……」
「何それ怖い」
しかし青江くん、乱くん、長谷部くん、鶯丸さん、獅子王くん、太郎さんか。乱くんは発狂して一周回って冷静になってそうだな。獅子王くん……は泣いてすがり付くか。太郎さんと鶯丸さんと長谷部くんが鬼神化するな、うん。
「で、何が起きたの?」
「検非違使が乱入しようとしたから滅しただけ。たろさんとうぐさん怖かってん」
「だろうね」
予想通りすぎて頭が痛い。あの2人は普段穏やかだけど、主が関することには鬼になる場合があるから。
とりあえず僕はため息をついて、しょんぼりしている主の頭を撫でる。ちらりと上目遣いで見上げられ、苦笑した。
「あんまり危ないことをするんじゃないよ、大事な゙妹゙」
「………うぃ、゙燭お兄ちゃん゙」
うっすら微笑んだ主。いつでも元気いっぱいに笑う主にはあまり似合わない笑い方だった。だから僕はお説教をやめて、主に手を差し出す。
「主、これから一緒におやつを作ろうか。何が良い?」
「ホットケーキ!」
途端にぱっと顔を輝かせた主は、僕の手を勢い良く掴んだ。そして、まさしく花咲くような笑顔を浮かべる。それが嬉しくて、少し手に力を込めて僕も笑った。
そのまま、僕らは厨まで歩いて行った。

穏やかな日々を。温かい食卓を。柔らかな賑わいを。そして、明るい笑顔を。
全部全部、主にあげたいものなんだ。君に受け取ってほしいものなんだ。たくさんもらっているから、少しでも良い、返していきたいものなんだ。そのために、強くなりたいと望んだ。

―――大事な゙妹゙を守るのは、゙兄゙の大切な役割だろう?


     


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あきゅろす。
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