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異能審神者の憂鬱
襲撃
今日の夕餉は何にしようかな、と大広間にいる皆を見るともなしに眺めながら考えていると、戸口に審神者が立った。自然、全員の視線が向く。
「夕焼けが綺麗だ。ここはいつもそうなの?」
昼間よりは機嫌の良さそうな彼女の雰囲気は柔らかく、少しだけ嬉しそうに見えた。年相応かそれに近い笑みを浮かべ、彼女は空を仰ぐ。そんな審神者に近づく、彼。
「だいたいこんな色だ。気に入ったか?」
「うん、とても綺麗だ。気に入った」
にっこりと、今度こそ満面の笑みを見せた彼女へ、三日月も笑みを返す。それを半ば呆然と僕らは見ていた。……彼の笑みを見たことなど、どれぐらいぶりだっただろうか。
前任者に無体を強いられていた三日月は、あの男がいなくなった直後は能面のように白い顔で過ごしていて。夜も満足に眠れないようで。ようやく最近、落ち着いてきたのだ。でも。
こんなに簡単に、彼から笑顔を引き出せるなんて。
悔しげに顔を歪ませて、小狐丸くんが三日月の背後に立つ。言葉を交わしていた彼女は不思議そうに彼を見上げた。その直後。
審神者の顔から、感情がすべて削げ落ちた。
続いて聞こえる、ぱたぱたという軽い足音。
「審神者様、刀剣様方!敵襲です!!」
は、とか、なんだって、と腰を浮かした僕らには目もくれず、彼女は右袖をまくり上げながら素足のまま地面に降りる。次いで、彼女の目の前の空間が裂けて敵刀剣が現れた。抜刀した僕らの耳に届いたのは、ちきちきちき、という音と、彼女の声。
「<縛れ、緋き鎖。その頑丈さ生命の如く>」
彼女が左腕を振るった瞬間、三日月の肩が跳ねた。

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