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異能審神者の憂鬱
明石国行@
ぶわりと桜と光が舞い、眼鏡をかけた偉丈夫が現れる。
彼はゆるりと笑みを浮かべ、京都訛りで話し出した。
「どうも、すいまっせん。明石国行言います、どうぞ、よろしゅう」
「初めまして、明石さん。審神者の死織です。よろしくお願いします!」
対する女性―――「明石国行」という刀の主となった審神者・死織も、笑顔で応える。
明石は新しい主が年若い女性であることにやや目を瞠り、次いで笑む。
「自分、働かないのが売りですねん。ああ、愛染と蛍丸の保護者ですさかい、その2人がらみなら考えますわ」
「にょ?」
初対面でいきなりそんなことを言われた彼女はきょとんとし、次にはなにごとか考えてから口を開いた。
「蛍くんと一緒なら、内番とか出陣とかするって意味、かな?」
「………?蛍丸の呼び名ですのん、それ」
「あ、うん。俺は蛍くんって呼んでるんだ」
にこ、と笑って死織は答える。ふぅん、と明石は呟きをこぼしうなずいた。
「まぁ、ある程度は働きますわ」
「ん、わかった。じゃあ内番と出陣は蛍くんと一緒ね。出陣は………とりあえず夕方一回ね」
彼女は笑みを浮かべ、改めて言った。
「これからよろしく、明石さん」

「………えろうにぎやかですなぁ」
顕現から数日後、明石はぽつりと呟いた。死織の刀剣達はひどく個性的で、今でもなじめない者がいる。
たとえば、
「んんんんん主今日も可愛いぃぃぃぃぃっ!」
「あああああ主尊いぃぃぃぃぃっ!!」
………今自分の目の前で主に悶えている、にっかり青江と加州清光がその筆頭だ。主本人はといえば、明石の膝を枕にすやすやと眠っている。ちなみに2人の叫びは小声で行われていた。強い。
さっき通りがかった江雪と宗三は自分の端末を取り出し、真顔でシャッターを切って主の寝顔を撮って行った。強すぎる。
「ところで明石、あんたあだ名は?」
やや遠くの方へ思いを馳せていた明石は、悶え終わった加州に問われ意識を現在に戻す。青江は幸せそうに主の写真を撮っていた。一眼レフで。
(………どっから出したんです?)
「明石聞いてる?青江は無視していいから」
「あ、はい。………あだ名、なぁ」
質問に明石は閉口する。この本丸の刀剣は皆、主だけが呼ぶ呼び名を持っている。もちろんひねらずそのまま呼ばれている者もいるが、「呼び方」は主だけのものだ。
けれど。
「自分、なんかした覚えありませんけどなぁ………」
「初対面時、なんて言った?」
再度問われ、思い出せる限りの会話を話した。
するとため息をつかれた。青江にも。
「いつ自分の世界から帰って来はったんです?」
「主に関する話なら帰ってくるよ。当然だろう?」
「何それ怖い。人のこと言えないけど。ねぇ明石、その『保護者』っての、だめだよ」
突然加州に注意され、明石は目を瞠る。加州の隣の青江は納得したようにうなずいていた。
「………何がだめなんです?」
「あのね。俺達は全員、主の゙家族゙なの」
「?」
何もわからず、明石は首をかしげるだけ。それを見た加州はすっと表情を改めた。
隣に座る青江も、どこか居住まいを正す。
「明石」
「……………はい」
「俺は又聞きだから、うまく話せるかわからない。でも大切なことだから、聞いてほしいんだ」
「…………わかりました、聞きましょ。何の話です?」
加州は真剣な眼差しで、明石を射抜いた。
「―――主の、話なんだ」

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あきゅろす。
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