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異能審神者の憂鬱
死織がスレ立てD(小説パート)
目の前の彼女の顔は、引きつっていた。それはそうだろう、刀を抜いた大勢の男に囲まれているのだから。
「政府からのスパイなぁ……大方俺が高官の息子だから、揺るぎない証拠を掴んで逮捕、といきたかったんだろうが」
残念だったな。そう言って、私の主である男は笑った。その手には細長いからくり。声を録音するというその代物には、和泉守の悲痛な叫びが記録されていた。
当の彼は、虫の息で彼女の前に倒れ伏しているのだけれど。
「…っ、すまねぇ………っ」
「……………」
彼女は黙って彼の謝罪を受ける。その瞳はまっすぐに、主を見つめていた。
それで、と。存外しっかりとした声が唇から流れ出る。
「どうなさるおつもりで?」
「……余裕だな。まぁ口封じに殺すのもやぶさかじゃないが、女は久しぶりなんだ」
下種の笑みを浮かべ、主はしゃがみこむ。察したのか、彼女はわずかに身を引いた。
「……犯しますか」
「そんな言い方すんなよ。ただ初めてだろうしなぁ……一期」
私の隣に立つ一期の肩が跳ねた。主は立ち上がり、笑みを浮かべたままこちらを振り返る。
「優しくしてやれ」
「っ、逃げ……っ!」
和泉守が弱々しく叫ぶ。彼女は一度息を吐き、挑むように、こちらを見つめた。
―――その姿の、なんと気高く、美しいことか。
思わず息を飲んだ私の隣を風が通り抜ける。気が付いた時には主は蹴り飛ばされ、壁に叩き付けられていた。突然のことに、皆立ち尽くすしかない。
「……同、さん」
か細い声が響いた。主を蹴り飛ばした同田貫正国は彼女を見下ろす。つられて視線を向ければ、子供のように泣き出す寸前の彼女がいた。
わずかに震える手を同田貫に伸ばせば迷うことなくその手を取り、そのまま彼女を抱き上げた。ぽんぽん、となだめるように背を叩く。
「ちゃんと来たぜ。だからもう、大丈夫だ」
「っ、うえぇぇ………!!」
こわかったよぅ、と涙声で言って、彼女は同田貫にしがみついた。




スレへ続く

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