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異能審神者の憂鬱
静かな殺意
規則正しい寝息が目の前の審神者から聞こえてきて、刀剣達は困惑する。うちの1人、蜻蛉切がこんのすけの方を向いて声をかけた。
「彼女はどういった経緯でここに?」
「いえ、それが……」
問いかけられたこんのすけは、言いにくそうに口を開いた。
「実は私もよく知らないのです。年齢や簡単な身体状況を聞いて、この本丸へくる門の前で顔合わせをして……。その時この方は、どこか諦めたような顔で笑っていました」
それを聞いて、三日月は審神者を見やる。まだまだ子供の、あどけない幼い寝顔。胎児のように丸めた体からは、抑えられた不安をうかがうことが出来た。燭台切の隣に立っている乱は、複雑そうな視線を向けていた。
同田貫はため息をつき、刀の柄に手をかけて審神者へ近づいた。すぐそばで足を止め、すらりと白刃を抜く。
ひた、と審神者の首筋にあてがう。しかし、
目を覚ます気配はなかった。それに彼は眉を寄せる。
「…今なら、簡単に殺れるぞ」
誰に問いかけるでもなく、同田貫は口を開く。その場にいる全員の視線が三日月へと向いた。…ここでは、三日月がすべての決定権を持つ。黙って審神者の寝顔を見つめていた三日月は、ふと思い付いたように言った。
「彼女は、違う」
何が、という具体的なことは何も言わなかった。ただ違うと、それだけで。それだけで彼らには、理由になるから。
「………そうか」
静かに呟いて、刃を向けた彼は彼女へと背を向けた。

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