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異能審神者の憂鬱
政府からのふっかけ
「………?主、どうしたの?」
その日、たまたま大広間を通った小夜は、そこで畳に突っ伏す死織の姿を見つけた。声をかけられた彼女は、小夜の方へ疲れきった顔を向ける。
そしてぼそっと呟いた。
「………死ぬわ」
「何があったの……………!?」
足早に主へと近づき、小夜は顔を覗き込む。死んだ目になっている死織はふふふ………と小さく笑った。
「みんなを集めてくれ………鬼畜政府がまたふっかけてきたってな」
「……………」
政府絶対許さない、と小夜は思った。

ぐったりと肘掛けに体を預け、今にも死にそうな顔で死織は座っていた。大きくため息をつき、上座から下座を見下ろす。
「えー。政府から端末の方に連絡がありまして」
これがさぁ、と彼女は乾いた笑みを浮かべる。大丈夫?と声をかけられるといや全然、と答えた。
もう一度ため息をつき、口元だけで笑う。
「一週間後、手入れされたブラック刀剣がくるよ☆」
「もうこれ乗り込んでも良いよね!?」
「練度の高い奴集まれぇっ!政府に乗り込むぞ!!」
同田貫の雄叫びに応え、太刀・打刀・脇差の数振りが立ち上がる。死織はそれを見ながら端末を懐から取り出し、政府からの連絡を読み上げた。
「『もしそちらの刀剣が納得しなかった場合、そちらの本丸を解体、審神者様は別本丸の引き継ぎを頼みます』」
『……………』
「元からはいorYesなのよ、選択肢なんて。身寄りのない女1人くらいどうとでもできるからね。騒ぐ奴がいないから」
というわけで、座れ。
どこまでも興味がなさそうな顔と声で死織は命じた。………事実、興味などないのだ、自分の生き死になどには。
「………この世は、地獄です」
ぼそりと、江雪が呟く。彼の周りは思わず頷いたが、主はそれに苦笑した。
「江さん、それに反論していい?」
「え?」
「地獄じゃないよ。俺にとっての世界は、そんな慈悲深いもんじゃない」
一斉に死織へと視線が突き刺さる。彼女は苦笑を深めただけだった。諦観のにじみすぎた、苦笑。
声も出せずに自分を見つめる刀剣達の前で、視線を床に落として死織は言った。
「何もかも、失ってしまったからね。俺の世界には、絶望と狂気しか存在していないから」
―――いつ、死ねるかな。
あまりにも小さな囁きを、彼らの耳は拾う。そして彼女はため息をつき、がらりと雰囲気を変えて笑った。
「ま、とりあえず受け入れましょー。またレア太刀あるみたいだし」
「……………誰?」
「鶴丸国永」
死織が告げた刀剣の銘に、その場にいる全員が驚きの声を上げた。

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あきゅろす。
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