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異能審神者の憂鬱
出会い
新しい審神者が来たことは、気配でわかっていた。刀の柄に手をかけ襖を睨み付けながら、奥にいる三日月を守るように全員が動く。
「審神者様、ここです!」
甲高い狐の声。しかしそれに対する返答はなく、前にいた小狐丸くんと山姥切くんが訝しげに襖を見やった。
「あー………」
気怠げな女性の声。女か、山姥切くんの唇が動く。
「すっっっっっっげー面倒くさい予想しか感じない。しにたい」
つーか土に還りたい。気怠げな中に諦観を滲ませた若い声が響く。もうどうにでもなれ、の言葉と共に襖が開かれた。
幼さの残る顔立ち。束ねられていない髪を鬱陶しげにかき上げ、眼鏡に縁取られた瞳は不機嫌そうに細められている。まだ成熟しきっていない雰囲気を纏った審神者は、
部屋にいる僕らをぐるりと見回して。
「うわなんだこれ顔がうるさい」
とても失礼なことを宣った。
「……は?」
小狐丸くんが声を漏らす。訳がわからない。
なんだろう、この子。
「これだから神様って奴は……これだから美形は……」
あー、もー、と彼女は唸る。呆気に取られながらも警戒を解かない僕らに対し、少し感心したように瞬く。
「ふぅん。元は刀、やっぱり警戒心が強い。しかも今は不信感の塊、か……」
「―――帰れ」
目の前にいる僕らを無視するように、1人独白を続ける彼女に向かい、同田貫くんが声を発した。視線が自分に向けられたのを見て、彼はそのまま続ける。
「帰れ。俺達に審神者は要らない。今すぐ立ち去れ、さもなきゃ………」
「ならば」
強い口調で、彼女は同田貫くんを遮った。口角を上げ、諦観を滲ませた笑みを浮かべる。
「敢えてこう言おう。――だったら君が帰してくれ。俺だって、帰りたい」
「………っ」
「…帰りたいんだ。望んで、来た訳じゃない」
言葉が進むにつれ、審神者から表情が消えていった。一瞬伏せた黒い瞳の中、大きな影を見た気がした。
「ま、いいか。…手入れさせてくれる?なんなら見張り付きでも構わないんだけど」
つーか全員こい面倒だから。一言そう言って、彼女は僕らに背を向ける。ふと思い付いたように振り返り、にやっと笑った。
「こなかったら、引きずってでも手入れするからな?」
ひらりと手を振って、彼女は歩き去った。

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