異能審神者の憂鬱 始め 後戻り出来ない状況ってこういうことだよなぁ。首の後ろに手をやってこきりと首を鳴らしながら、俺は与えられた本丸を見上げる。つーか、初心者にブラック本丸引き継がせるとか、政府頭わいてんじゃねぇの。 いっこうに先に進もうとしない俺を振り返り、狐型式神ロボット・こんのすけが口を開く。 「審神者様、どうされました?」 「……んーん、なんでもね」 運命は残酷であると、骨身に染みてわかっていたはずなのに。それなのに、諦めきれない自分がいた。…どうやら、ずいぶん丸くなったらしい。でも。 後戻りする気もないくせに、いつまでも何をうじうじと。自分で決めたことだろうに。 被害者面でも、する気かい? 「…まさか」 自分の声に、せせら笑う。何を馬鹿なことを。運命に弄ばれて、絶望することなんかわかっていただろうに。そうやってまた、世界を喜ばせる必要性も意味も、あるはずがないだろうが。 後戻りなんて選択肢、最初からないのだから。 「どこに行けば?」 「はい、ご案内します!」 元気だなぁと思いながら、澱んだ空気を纏う本丸へと足を進めた。 [次へ#] [戻る] |