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異能審神者の憂鬱
彼女との距離
夕食後、同田貫は青江達がいる大部屋へと向かった。そこで出陣に参加する者達を集めると、自分が隊長であること、出陣は明日の昼過ぎ、遠征と共に行うことを告げる。
彼が部隊長だと聞いて、何名かが驚いた顔をした。
「てっきり、三日月になるものかと」
「どちらかと言えば、主は三日月を苦手にしてる。小狐丸もだな。少し前までは本丸使って壮大な鬼ごっこしてたぞ。鬼2人で」
苦笑しながら同田貫は言う。話を聞いていた一期一振が眉間にシワを寄せて口を開いた。
「逃げていたのですか、審神者が」
「あー。主は他者との間に壁作って接するからな。どれだけ親しくなろうと、主との距離は零にならない」
生きていく上で必要な、自分以外の誰かとの関わり。その誰かに踏み込ませても、自分からは踏み込んで行かない彼女。寝ている時ぐらいしか自分からは寄ってこない死織を思い出し、同田貫は目を伏せた。その彼の後ろから、声がかかる。
「同さん、めーっけ」
「……主、か」
同田貫が振り返ると、死織が笑いながらとことこ彼に近づいてくるところだった。もう覚えた自分との距離で足を止め、彼女は同田貫の周りに集まる刀剣をぐるりと見回す。
「明日はどうぞ、よろしくお願いしますー。最近新勢力とかも出て来てるんで、お気をつけて」
ぺこりと頭を下げてから、顔を上げてにっこりと笑う。無邪気な、子供のような幼い笑顔を向けられた彼らは、少しだけ戸惑った。
「……こちらこそよろしく。寝なくていいの?もう遅いけど」
「その為に同さん探してたん。明日のことでお話あるんよー」
「ああ、わかった」
死織の言葉に頷いて、同田貫はそっと彼女の髪を梳く。青江達の目には、その仕草が、いとおしいものを慈しむような動作に見えて。無意識に、息を飲んだ。本人達は気づいているのかいないのか、ごく自然に同田貫が髪を梳き、それを自然に、当たり前のこととして死織は受け入れる。
微妙に固まった彼らを不思議そうに彼女は見つめ、それからふわりと笑った。
「じゃあ、お休み。また明日」

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