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異能審神者の憂鬱
死「ブラック審神者の馬鹿!」
縁側に座った死織は、じとーっと手元の紙の束を見ていた。たまにぱらぱらとめくり、また表紙を見つめる。それを何回か繰り返したところでため息をつき、立ち上がった。
廊下をしばらく歩き、広間をひょいとのぞき込む。そこには、ごろりと畳の上に横になっている同田貫がいた。彼は気配に顔を上げると主を見つけ、彼女が微妙な顔をしているのに気付くと眉をひそめる。
「どうした?主」
「あー、うん。同さん、膝座っていい?」
「あ?構わねえよ」
同田貫は起き上がり、あぐらをかいた足を軽く叩く。とことこと歩み寄ってきた死織の腕を引いて自然に座らせる。全体重を背後の彼にかけ、彼女はため息をつきつつ表紙をめくった。
「なんだそれ?」
「明後日くる刀剣の名簿。読んどけよって政府が送りつけてきた」
「………ほぅ」
死織の説明に半眼になった同田貫だった。
彼もため息をつき、壁に背を預けて死織の胴体に腕を回す。
しばらく静かな時間が続いた。その間、同田貫は自分の胸元でたまに動く死織の頭を眺めていた。
人の姿を得て顕現し、しかしまともな扱いなどされなかった。前任の男が連れて行かれ、中継ぎの男とは対面しないまま出会ったのがこの彼女。出会った当初から自分勝手に振る舞い、子供のような仕草をし、―――悟りを開いたような瞳で自傷行為をする。精神が子供のまま成長しなかった彼女は、何があろうと笑うことだけは忘れなかった。
人間にもいろいろいるんだな、と思いながら死織を眺めていた同田貫の目の前で、読み終わったのか彼女の手から紙の束が飛び散った。ばさっと広がった何十枚もの紙を目で追って、同田貫は死織へと視線を戻す。
紙を放り投げた本人は沈黙を守ったままだった。
いつの間にか、彼女のまとう雰囲気が変わっていた。いつもはふんわりとした穏やかなものだが、今は張り詰めた糸のような……怒り。
「……主?」
異変に気付いた同田貫が死織を呼んだ。けれどそちらには顔を向けず、するりと彼の懐から抜け出る。まっすぐに廊下へと出ると、1回深呼吸。
そして。
「……くぉん、のっ……………」
すべての怒りを込めた叫びが、本丸に響き渡った。
「ブラック審神者の、馬鹿―――!!」

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