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トリップ小説 完結
病人2号
「竹中半兵衛様がいらっしゃいましたみっつん騒いだら殴る」
句読点を打つ暇なく言い切ると、みっつんが開けようとした口を慌てて閉じた。うむ、みっつんは学習が早いから助かる。
「で、なんで大谷を呼んだんだよ」
「神が説明してない。命の危機。おk?」
『おけ把握』
皆どんどん現代に染まっていく……ちょっとヤバい感じ?でもどうしようもないしなぁ。
困ったもんだ。
「春織よ、終わったぞ」
「あ、刑部ありがとー」
ひらひらと手を振り、はんべさんの方を見やる。納得はしていないが理解はしたという顔をしていた。まぁそうよな、いきなり未来のこんなワケわからん小娘のところに飛ばされたらそうなるよな。俺だったら神とやらを殴ってる。………あれ、いつものことだった。
「そんなわけで、神、召喚!」
「呼ばれて飛び出てジャジャジャジャーン、俺が神だぐほぉっ!!」
神が現れた瞬間、俺の右腕が唸りを上げて右ストレートを繰り出した。それは綺麗に神の顔面に決まり、神が吹っ飛ぶ。
バキバキと手の関節を鳴らしながら、神の前に仁王立ちする。
「さて神よ、俺に何か言うことは?」
「説明もせずに放り出してすいません」
「謝って済めば秩序や常識はいらないんだよおぉっ!!」
その時の俺の様子を後に彼らはこう語る。まるで鬼神がいるようだった、と。

ひとしきり神をボコボコにした後、俺はすっきりとした顔で神に問いかけた。
「で、なんで説明を渋ったのかな?」
「渋った訳じゃないんです、説明しようとしたら手違いで先に送っちゃっただけなんですうぅ……」
「なるほど、把握した。でも俺命の危機だったよね?反省して?」
「反省してますだから拳を振り上げないでえぇぇっ!!」
ひいぃっ、と神が頭を庇うように丸くなる。ほんっとにこいつ最初の頃とキャラ違うよなー、これがキャラ崩壊とか言うやつか。俺はそのまま考え込む……前にはんべさんへ視線を向けた。
「嘘のような真の話なんですけど。信じてもらえまして?」
「………信じるしかないようだから」
ため息混じりに頷かれ、俺は同情を込めて彼を見つめる。
しかし、それとこれとは話が別だ。
「んじゃあいいよね。はんべさん、病院行こう」
「……………は?」
「医者にかかりましょう、って意味です」
竹中半兵衛は肺結核が原因で亡くなった。でも今の医療ならあっという間に治してくれる。刑部の病だってだんだん良くなってきてるし、彼は時間が限られてるのを気にしてるから。
「君のその病、今の時代なら治るよ」
「………っ!」
「ギブアンドテイク、お互いに有利な条約を結びましょうってことっす。俺は君の病を治す手段を持ってる。したら君は残り時間を気にしなくてすむ。悪い話じゃないはずだよ」
「……その見返りは?」
「俺の身の安全で」
さすがに初めましてさようならはキツイっす。今までもいろいろ危ない目には遭って来ましたが、身の安全を意識するほど危険な目に遭ったのは初めてっす。
そういう訳なんで、はい。
「それだけかい?」
「後は勝手に友達が護衛してくれてるんで、大丈夫です。こたもいるし」
「………友達?」
みっつんと刑部とナリーです。あと最近はさっちゃんやゆっきー。ゆっきーは最初から警戒心ゼロでしたが、一軍の大将として大丈夫なんだろうか。さっちゃんの苦労が偲ばれる。
上3人はどうした状態。みっつんは自分が尊敬した人や懐に入れた人以外には興味を示さないはずだし、刑部はそもそもみっつん以外眼中にないし、ナリーは「我を理解出来るのは我だけで良い」な人だし。……本当に何があったんだろう。みっつんとナリーは香月さんのおかげで丸くなったのかな?そうだったらいいんだけど。
「まぁ細かいことは気にせず。病人に暴力を振るうことはないので安心して下さいな」
「……君は面白い子だね」
竹中半兵衛は、面白そうに―――可笑しそうに、笑った。

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