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トリップ小説 完結
死神、襲来
いまさらだが、我が家のことを説明しようと思う。
5階建てマンションの最上階、3LDK。1人で住むには有り余る広さだが、そこに11人の居候がいると考えてみてほしい。
ひとたび暴れると騒がしいんだ、これが。まぁ何が言いたいかというと、つまり。
人がいない間に何かあると、帰ってきた瞬間に重苦しい空気が待っているということだ。
………人が仕事行ってる間に何したねん、自分ら。思わずエセ関西弁も出るってもんだ。
「人の気配に聡いさっちゃんやみっつんがこないということは、それだけヤバイ状況な訳か」
小声で呟いて、小さくため息。とりあえず玄関からすぐそばにある自分の部屋に入り、こた、と呼ぶ。
すぐさま現れたこたに状況を説明してもらい、目を見開いてリビングへ向かった。
「ただいま皆!」
「帰ったか。……話は聞いているな?」
「おkだぜナリー。全部聞いた。気絶させて、武器取り上げたんやろ?婆裟羅は?」
「神が取り上げてあると言っていた」
「ありがとみっつん。さて、どう見ても忍が縛ったとしか思えない縛り方を見るに、万が一にもほどけることはなさそうだね」
ふむ、と腕組みをして足元を見下ろす。そこには、白銀の死神がいた。
………何してんねん、神。そんなに俺殺したいん?やはり一発じゃ足りなかったか、とこめかみを引っ掻く。あの時胸ぐら掴んで数発殴っときゃよかったかな。
「うーん、どうしよう」
「そのまま捨て置けば良かろ。春織、われはそなたが傷つくのを望まん」
「ん、ありがとう刑部。でもそうも言ってられないのよ……あ」
起きるな、の声に緊張が走る。一応お父様のそばまで下がり、殺人鬼の範囲外へ移動した。それでも危険なのか、みっつんや刑部が俺の前に立つ。
―――ゆっくりと、幽鬼のように死神が身を起こす。彼は俺をその目に捉え、にやあと笑った。
「お初にお目にかかります、明智光秀です…貴女が春織さんですか?」
「俺が舞霧春織であることは間違いがないよ。君があけっちーか。普通に話せるんだね」
普通に会話を始めた俺達を、ぽかんと皆が見つめる。お父様は「さすが我が娘」とでも言いそうな顔で笑ってらっしゃった。褒めても何も出ませんことよ?
「あけっちー、この時代は君には生きずら過ぎると思う。だからといって自由にさせてあげることは出来ない。そこはわかってほしい」
「えぇえぇ、わかっていますよ。だからこそ心躍ったものです。貴女を切り刻む想像をするたびにね!」
縄の拘束を解き、床に落ちていた己の武器を拾い上げ俺に肉迫する。とっさに反応したみっつんの刀を弾き、死神の鎌が振り上げられた。……おいおい、忘れてもらっちゃ困るんだぜ?
俺は何よりも手が早い人種だ。つまり振りかぶれば胴ががら空きになる。そこを狙うのは―――針に糸を通すよりも容易い。
「俺的必殺・問答無用拳!」
あけっちーの懐に潜り込んで鳩尾に一発、拳をお見舞いしたのだった。
……なんだか洗礼みたいになってて嫌だわね。

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