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トリップ小説 完結
金平糖はピエロの涙(三成視点)
「あ、そうだ。ねぇお父様、こんな話知ってる?」
それはある日の昼下がりで、春織がいつものように魔王の膝に座って金平糖を食べている時だった。
「どんな話だ?」
「あのね、金平糖はピエロの涙、っていう話なんだけどさ」
そのまま春織は説明を始める。ピエロとは奇術師のことで、摩訶不思議な手品をするなどして人々を楽しませる者なのだと言う。自分がどんなに辛く苦しい思いをしていても、観客のため笑みを絶やさないのだと。
「でね、そんなピエロが人知れず流した涙が形になったものが金平糖っていう、つまりはおとぎ話なんだけどさ」
ピエロが表に出せない感情や涙が形になって出来たものが金平糖。だからさまざまな色があって、こんなにも甘いのだと。
「一説では、告げられない想いが金平糖になった、っていうのもあるよ。だからこの話にかこつけて想い人に金平糖を渡すってのもあるみたいだし」
人知れず募らせた恋心。それが形になったとすれば、それはこの上もなく甘美な味がするだろう。だから金平糖は甘いんだよ、と悪戯っぽく笑って春織は言った。
「……なかなか面白い話だ」
「でしょう?俺もたまたま見つけた話でうろ覚えだから、間違ってるかも知れないけど」
でも面白いよね。この金平糖がどこかのピエロが流した涙だったらって考えるとさ。
私はそれを聞いて、想像する。言えない想いを内に秘め、そっと流した涙が形になって出来たものが金平糖。それはこの上もなく煌めくことだろう。この考えは私らしくないが、春織の考え方が移ったのかも知れない。
私は刑部に意見を聞くべく立ち上がった。……刑部は、どう考えるのだろうか。

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