1 (元)いじめられっ子×いじめっ子 幼いころ、俺はバカだった。 自分より弱そうなやつを選んで、ちょっと意地悪して。 自分より強そうなやつについて、意地悪して。そうして小学生のときは育ってきた。 あの頃なんてそんなもん。 自分が楽しいと思ったことは、正しいと思ってたんだから。 だから、忘れてた。 人は、楽しいことは忘れるけど、ツラいことは一生覚えてるっていうもんなぁ…。 ―ごめんなさい― 『今日からこのクラスに新しい仲間が増えます。森山茜くん、入ってちょうだい』 「はい」 『転入生?マジかよ』 「男かぁ。可愛い子だったらよかったのになぁ」 夏休み明けに転入生。 珍しいなと思いつつ、女の担任に呼ばれて入ってきたやつにガックリ。いやほら、男としては可愛い女子にきてほしかったっていうか、ね? その代わり、女子は大興奮。 そいつ、すっげーイケメンだった。悔しくなるくらい顔がよくて、モデルとかしてんじゃね?って感じの。 『…チッ、いけすかねぇな』 「茜って女みたいな名前なのになぁ」 『ははっ、チカがそれいうか!』 「う、うっさい!」 …改めまして、福山千佳広です。高1にもなって、実はまだ成長期がきてないという、悔しい事実を隣のやつに突きつけられました、くそっ。 顔も…小学生のまま育ったっていうか、つまりはまぁ、男らしくないっていうか…ぐすっ。 だからイケメン見るとムカつく。滅べ!顔交換しろ! 『じゃあ森山くんの席は…あそこ、福山くんの後ろね』 「福山…」 『福山くん、手をあげて』 「あ、はい」 俺の後ろにくるのか、なんて思いながら手をあげて、森山を見た。…ら、物凄く見られてた。 見つめ…いや、睨まれ?よく分かんないけどギラついた目で俺を見てる。 …初対面ッスよね? いや、そのはず、うん。 茜って名前にちょっと引っかかったけど、こんな知り合いいないし…。 「福山…なんていうの?」 「ち、千佳広だけど…」 「そう、千佳広か。…これからよろしくね、イロイロと」 ――ゾクゥッ 「っ…!?」 [次へ#] [戻る] |