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(元)いじめられっ子×いじめっ子


幼いころ、俺はバカだった。
自分より弱そうなやつを選んで、ちょっと意地悪して。
自分より強そうなやつについて、意地悪して。そうして小学生のときは育ってきた。

あの頃なんてそんなもん。
自分が楽しいと思ったことは、正しいと思ってたんだから。


だから、忘れてた。
人は、楽しいことは忘れるけど、ツラいことは一生覚えてるっていうもんなぁ…。



―ごめんなさい―



『今日からこのクラスに新しい仲間が増えます。森山茜くん、入ってちょうだい』


「はい」


『転入生?マジかよ』


「男かぁ。可愛い子だったらよかったのになぁ」



夏休み明けに転入生。
珍しいなと思いつつ、女の担任に呼ばれて入ってきたやつにガックリ。いやほら、男としては可愛い女子にきてほしかったっていうか、ね?

その代わり、女子は大興奮。
そいつ、すっげーイケメンだった。悔しくなるくらい顔がよくて、モデルとかしてんじゃね?って感じの。



『…チッ、いけすかねぇな』


「茜って女みたいな名前なのになぁ」


『ははっ、チカがそれいうか!』


「う、うっさい!」



…改めまして、福山千佳広です。高1にもなって、実はまだ成長期がきてないという、悔しい事実を隣のやつに突きつけられました、くそっ。

顔も…小学生のまま育ったっていうか、つまりはまぁ、男らしくないっていうか…ぐすっ。
だからイケメン見るとムカつく。滅べ!顔交換しろ!



『じゃあ森山くんの席は…あそこ、福山くんの後ろね』


「福山…」


『福山くん、手をあげて』


「あ、はい」



俺の後ろにくるのか、なんて思いながら手をあげて、森山を見た。…ら、物凄く見られてた。
見つめ…いや、睨まれ?よく分かんないけどギラついた目で俺を見てる。

…初対面ッスよね?
いや、そのはず、うん。
茜って名前にちょっと引っかかったけど、こんな知り合いいないし…。



「福山…なんていうの?」


「ち、千佳広だけど…」


「そう、千佳広か。…これからよろしくね、イロイロと」


――ゾクゥッ


「っ…!?」



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