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男は、部屋を飛び出した。
走って走って、ついた先は愛しのあの子の家。チャイムを鳴らして、招かれるまま入り、唖然とした。



『あの子のこと…とても大事にしてくれてたものね。お葬式のときは悲しみで放心してたってお兄ちゃんが…今、お線香あげてく?』


「ま…っ、死、んだのは…兄貴の方じゃ」


『え…いいえ、弟の方よ?いつもお兄ちゃんが、あなたを慰めにいってたんで、しょ?』


「っ…そんな!葬式はあいつがきてほしくねぇって…自分の目の前で兄貴が走り去って車に…嘘だろ…死んだのは、あいつ…?」



なら、なぜ。
兄の方はそれを黙って、あまつさえ弟のフリをしていたのか。
仏壇に飾られた、先ほどまで会っていた彼と同じ顔の子。

愛しのあの子は、こっち?


男は、狂ったように泣き叫んだ。彼らの家族が困惑してしまうほど、怒りと悲しみに満ちた顔で。

ああ、葬式にも出てやれなかったなんて。ごめんな…気づけなくて。愛していたんだ、本当に、愛して…。







「……ふ、はは…あははっ!…あーあ、バレちゃった…」


そうだよ、おへそのこと忘れてた。ベッドの上で、兄だったその子は自嘲気味に笑った。


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