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同じ顔、
同じ声、
同じ背丈、
同じ趣味。
全部が、一緒だった。
双子というよりも分身のようで、でも、性格だけは。
兄は大人しく人見知り、
弟は明るく人懐こい。
性格だけは、2人で1つといわれていたほどに、極端で。
……けれどある日、それは崩れた。
片割れが車に引かれたのだ。
双子は1人になり、悲しみに明け暮れた…。
◆
「ぼっ、僕の目の前で…っ」
「ツラかったな…泣いていいぞ。俺が半分、その悲しさを持ってやるから」
「ふぇぇっ、どうしていなくなっちゃったのぉっ」
彼は、片割れがいなくなってとにかく泣いた。特に彼氏の前では、強がることを忘れたかのように、抱きつき、延々と泣いた。
その彼氏もそれを受け止めた。
いつも明るく笑顔の絶えない愛しい子が、こんなにもツラい思いをしているなんて。
……双子の、お兄さんの方が事故でなくなったそうだ。
久しぶりに2人で出掛けたあの日、人混みに怯えた兄が足早に去ろうとして、信号無視をして。
弟の、目の前で。
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