2
『おいそれ…キスマ、じゃね…?』
『どんな女だよっ!年上かぁ?』
「っ…ぁ、あ…こ、れは…」
『『…?』』
「ふぇ…っ、ぼく、僕…汚いの…っ」
うるん、と濡れる瞳。体を隠すように服と腕を前で交差させ、プルプルと体を震わせて茜は泣き出してしまった。クラスメートは慌ててかけより、慰めの声をかける。
「ひっく、知らな、男に…うぇ、お、襲われてっ」
『っ──!?』
『も、もういいから!悪かったムリヤリ着替えさせてっ』
「ふぇ、気持ち悪く、ない…?ぼく、僕…っ」
『キモくなんかねーよ!茜は可愛くて綺麗だぜっ』
なぁ?──そうだそうだ!
周りからあがる声に、茜は嬉しそうな笑顔を見せた。だが彼らは知らない。そのアトは、決してムリヤリついたものなんかじゃないことを。そして余分な知識を植え付けられたのだ。男が、男をそういった対象で見て、ヤレることを。
ゴクリ、とどこからともなく鳴った音は、みんなの声にかき消されてしまった…。
……そんな、ある日。放課後茜は1人で教室に残っていた。勉強のため、と表向きはいっているが、勉強なんてしていない。ニコニコと外を眺めているだけだ。
そこに現れたのは、普段からニヤニヤと茜を見ていた男に、戸惑いを見せる男。
『あっかねチャーン、1人で何してんの?』
「え…っ、あの、お外見てて…」
『なぁ…アンタ、男としたことあるんだって?俺ともしてみねぇ?』
『はあ!?お前何いって!?』
『まーまー、俺だけいい思いすんのわりーだろ?お前もしようぜ。茜チャンのこと可愛いっつってたろ』
危ない、会話。だが茜は怯えるフリをして、ニヤニヤとその会話を聞いていた。近づく男にピクリと体を反応させ、イヤイヤと目に涙を浮かべて首を振る。
けれど抵抗なんてしない。待っていたのだ、このときを。
「やっ、やだぁ!助けてよぅっ」
『や、やめろよ!』
『あ゙ー?』
「ふぇぇん、助けて…っ…僕、も、あんなことしたくないのぉっ。怖い、よぅ」
『っ…お、大池!?///』
きゅうっ、ともう1人の男に抱きつき、涙で濡れた顔を押し付ける。
その行為はとても可愛らしく、そして官能的だった。なぜだろうか、嫌がっているのに、誘われている気がするのは。
『お、そのまま押さえとけよー?クク、気持ちよくしてやるからな』
「きゃあ!ひっ…やぁぁンッ」
高い、高い声。
甘い、甘い声。
男は頭が麻痺していくのが分かった。腰に抱きつく茜を抱き締め、荒々しく唇を奪う。それから先は…察していただきたい。
まだ人気のある校舎に響く甘い声。その日から、彼らは変わった。
◆
『茜チャーン、今日は4人だけどいいかー?』
「う、うん…僕、頑張るね…っ」
『くぅー可愛いな健気で!茜チャンは俺らのオアシスだよ』
全校が、茜に虜になった。あれから1ヶ月も経てばほとんどの人が茜と関係を持ち、茜も調教された……ふりをした。
男の欲は茜へ。茜だけがその学校での受け皿だった。
………のに。
『おい…今日茜チャンは?』
『知らねー。昨日の奴ヤりすぎたんじゃね?』
『ギャハハ!茜チャンかっわいそーう』
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!