王道ではない男子校
王道の学園とは、お金持ち校でエスカレーター式の全寮制の男子校のこと。容姿、家柄、学力の順位に重視され、生徒会は人気投票で決まる。顔のいい人には親衛隊なんてものがいて、外部のものは排除する。
なんて、あげればきりがないのだけれど。
さて、今回の物語の舞台を見てみよう。
確かに私立の男子校ではある。だが寮は希望者だけで、決してお金持ちの学校というわけではない。この学校で重要視されているのは、やはり各々の力とやる気。実力主義だ。
そして同性愛者はいないに等しい。中にはそういう人もいるが、その人たちはみんな黙っているし、外との交流がないわけではないから、いわゆるノーマル学校なのだ。つか、可愛い男の子なんていない。みんな男勝り。
「……ふふ、ここかぁ…」
そんな普通の学校に、今日は転入生がやってくる。別に珍しくはない。やんちゃした男の子などよくやってくるし、転校していく人だっている。だが彼が来たことで、この学校に新たな風が吹くのだ…。
彼の名前は大池茜。男、だが容姿は女の子のように可愛らしく、背も低い。制服を着ているから分かるものの、私服なら分からないだろう容姿だ。
…そう、男子校には不可欠な、受けの要素を持つ転入生。
『男しかいないがみんないい奴だ』
「はいっ!わぁー僕、楽しみになってきましたっ」
『っ…そ、そうか。あ、ここだ』
「せ、せんせぇ…一緒に入っても、いいですか…?」
キュッ、と先生の服を小さな手で握り、目を潤ませて下から見上げるように。大きな瞳と長い睫毛にほんのりと色づく頬、ぷるんとした唇。…先生は、思わずドキリと心臓を跳ねさせた。が、気のせいだろうと頷いて教室に入る。
『席つけー転入生を連れてきた。大池』
「は、はい…っ…えと、大池茜です。分からないことだらけだけど、よろしくお願いしますっ」
『……マジ、男?』
『女みてぇ!』
『ほらほら、仲良くしてやってくれな』
掴みはイマイチ、といったところだろうか。ペコッ、なんて音がしそうな可愛らしい挨拶も、ここでは笑われるだけ。
けれど茜は満面の笑みで顔をあげた。そしてルンルンと自分の席に座る。
『なぁ、女みてぇっていわれねー?』
「あ…よく、いわれるの。僕男の子なのに…変、かな?気持ち悪いのかな…っ?」
──ウルウル
『い、いや別に…っ、あ、茜って呼んでいいか?』
「うん!えへへ、よろしくねっ」
…こうして、大池茜という異端の風がこの学校へ吹き付けた。
彼の噂はまさに風のように全校へ回った。男の割に女々しい転入生。だがどこか愛らしく、可愛がりたくなるようなタイプ。一目見る価値は、あり。
それにいち早く食いついたのは、やはり元々ゲイ・バイの人たち。こっそりと茜を見ては、ニヤニヤとした笑みを浮かべた。それに茜は…気づいている、が、何もしない。
『おい茜、次体育だぞ』
「あ、えと…うん。み、みんなの前で着替えるの、ちょっと恥ずかし…なって…」
『は、はあ!?』
『男同士だろーがっ』
「う、うん…」
そういいながらも恥じらいを見せる茜に、男たちは何だか見てはいけないものを見ている気になる。バサッと脱いだ服の下は白い肌に、…赤い、アト。
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