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「関係ないっしょ?俺のことなんだからアンタが口挟むなよ」
「いいや、もう関係者だ。話せ。じゃなきゃこのまま警察に連れていく」
わー…マジメ君のくせに俺様きたー。しかも大真面目な顔してるし。
あー警察は面倒だな。
まぁ、こんな俺を迎えにくる親も身内もいないけど。
「分かった。いったら見逃してくれんだろ?」
「……聞いてみねぇと分かんねぇ」
「はいはい。俺さ、やりたいことたくさんあんだよね。それはもうお金がかかるわけ。だから手っ取り早く稼げる方法を探してこうなった。以上」
「やりたいこと…?ならそれこそ、そのためにバイトをしろ。手っ取り早くなんてお前に、まだたくさん時間あるだろ」
「ないし。俺あと2ヶ月生きられるか分かんねーの。だから一刻も早く金が欲しいし、いつか滅びる体の心配なんてしてないの」
死んじゃうんだから、今更体がどうこういってもしょうがないし。
だったら気持ちいいことでもしてお金稼いで、やりたいことやりたいんだよ。
俺には時間がない。
とにかく今は、大金が欲しい。
「強盗とかしないだけマシでしょ。ほら、話したんだからもう…って、は?」
「っ…死、ぬのか…?」
「そ、そうだけど…何、関係ないだろ、俺がいつ死のうが。でも何も出来ないまま死ぬのは嫌だから、金が欲しいわけ…って、だから何であんたが泣いてんだよ!?」
「だっ、おま、んなことサラッといってんじゃねーよ!」
えーヤバい、すっげぇめんどそうな奴に捕まったっぽいんだけど。
つか、俺別に死ぬことに対しては何も感じてないし。
怖くはない。
こんな俺が死んだって、世の中は何も変わらずに流れていくわけだし。
ただ、したいことはして死にたい。それだけ。泣かれる意味が分かんない。
──ズビッ
「ちなみに、してぇことってなんだ?」
「なんでそこまでいわなきゃなんねーの?」
「力になってやれるかもしんねぇだろ!」
「いや知らねーよっ」
「………俺んちは金持ちだ」
ぅ、なんだその脅し文句は。
金があるから俺のしたいことさせてくれるって?今知り合ったばかりの見ず知らずの俺に?
死ぬ俺に金を出すって?
………ああ。
「やっぱ俺の体、興味あんの?いーよ、そういうことならヨロコンデ」
「ちげぇ。俺はお前に感動した、手助けがしたい」
「……変人、っていわれね?」
「変な人とならよくいわれるが」
「うん…ふ、ふはっ!あー何なんだよホント。俺はもう長くないんだっつーの」
おどけていったら、真剣な声で分かってる、といわれた。
バカだなー嘘ついてるかもしんないのに。
あーあ、俺にはもったいないような人だ。俺みたいのは、小汚いオッサンで十分なのに。
「……世界旅行…はさすがに時間が足んねーけど、せめてヨーロッパに一週間とかいってみたいんだ」
「は…?」
「それからたっかいメシ食って、…あ、一泊とかでいいから沖縄と京都もいきてぇ」
「なら大阪と奈良もつけとけ」
「いいね。んで、遊園地とかいっぱいいって、見たい映画みて、漫画本とかゲームとか買いあさって」
服とかはいらねー。
とにかく楽しいことをたくさんしたい。そのためには金が必要なんだ、海外旅行なんて特に、さ。
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