しつこい人と諦めた人
「……ねぇ、俺を買ってよ。
一回10万…高い?
その分満足させるから。
ねぇ、俺を、買って?」
誰でも良かった。
お金をくれるなら、
どんなにブサイクでも鬼畜な野郎でも、
どうでも良かった。
だって俺は、
体なんてどうでもいいから。
今必要なのは、お金だから。
ああなのに、
どうしてアンタだったんだ…。
「なんでこんなことしてまで金が欲しいんだよ」
◆
いざ金が必要になると、人間は最悪なことしか考えられないらしい。
強盗、誘拐、博打、
……そしてウリ。
人に迷惑をかけるつもりはなかった。でも自分ならどうなっても構わなくて、ならそういう趣味の奴に買ってもらおうかと。
今更貞操がどうのなんていわないし、ちょっと手を加えれば男受けする顔してるし。
俺なんかの体で大金が手に入るなら…。
そう思って早速夜の街をブラブラする。男のわりに露出の多い服をきて、声をかけてくれんのを待ってます、みたいな。
でもさっきから何人もこっち見てるけど、声はかけてこない。
ああ、俺なんかじゃ満足出来なさそう?参ったな、お金が欲しいのに。
こっちから声、かけてみるかな。
「……ねぇ、今、暇?俺さ、お金欲しいんだけど…買ってくんない?一回10万…満足させるからさ」
『な…っ!?』
「おねが…、」
「おい、何してんだよお前」
………邪魔された。
まんざらじゃなかった感じなのに、入ってきた男のせいで逃げられた。
チッ、かっこいい感じの人選んだのに。
そう思って振り返ると、美形が困惑した表情で俺を見てた。
「……離して」
「ダメだ。今、何しようとしてた」
「どうでもいいだろ」
「よくねぇ。俺と同じぐれぇだろ、お前。何しようとしてた」
「はぁ…体売ろうとしてた。あ、あんたが買う?俺処女だよ。10万でヤらしてあげる」
それともこういうの、キモイ?
そういった、バチンと思いっきり叩かれた。
あー…はは、そりゃキモイか。
変な趣味してなさそうだし。
それとも俺だったから…か?
「自分の体をなんだと思ってんだ!金が欲しいなら働けどアホウッ」
「…は…?」
「体を売ろうなんざ間違ってんだろ、目ぇ覚ませっ」
「え…えぇー何なんだよアンタ…」
ちょっとやんちゃしてます、みたいな男前のくせに積極かよ。
なに、そういう不純なことが嫌いとか?
あー最悪だ。
とことんついてないなぁ俺。
でもさぁ…。
「俺、自分の体とかどうでもいいんだよね。とにかく金が欲しいの」
「……どうしてだ。バイトでもすればいいだろ」
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