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しつこい人と諦めた人


「……ねぇ、俺を買ってよ。

 一回10万…高い?

 その分満足させるから。


 ねぇ、俺を、買って?」





誰でも良かった。


お金をくれるなら、
どんなにブサイクでも鬼畜な野郎でも、
どうでも良かった。


だって俺は、
体なんてどうでもいいから。


今必要なのは、お金だから。



ああなのに、
どうしてアンタだったんだ…。





「なんでこんなことしてまで金が欲しいんだよ」







いざ金が必要になると、人間は最悪なことしか考えられないらしい。

強盗、誘拐、博打、
……そしてウリ。


人に迷惑をかけるつもりはなかった。でも自分ならどうなっても構わなくて、ならそういう趣味の奴に買ってもらおうかと。

今更貞操がどうのなんていわないし、ちょっと手を加えれば男受けする顔してるし。


俺なんかの体で大金が手に入るなら…。



そう思って早速夜の街をブラブラする。男のわりに露出の多い服をきて、声をかけてくれんのを待ってます、みたいな。

でもさっきから何人もこっち見てるけど、声はかけてこない。


ああ、俺なんかじゃ満足出来なさそう?参ったな、お金が欲しいのに。

こっちから声、かけてみるかな。



「……ねぇ、今、暇?俺さ、お金欲しいんだけど…買ってくんない?一回10万…満足させるからさ」


『な…っ!?』


「おねが…、」


「おい、何してんだよお前」



………邪魔された。
まんざらじゃなかった感じなのに、入ってきた男のせいで逃げられた。

チッ、かっこいい感じの人選んだのに。

そう思って振り返ると、美形が困惑した表情で俺を見てた。



「……離して」


「ダメだ。今、何しようとしてた」


「どうでもいいだろ」


「よくねぇ。俺と同じぐれぇだろ、お前。何しようとしてた」


「はぁ…体売ろうとしてた。あ、あんたが買う?俺処女だよ。10万でヤらしてあげる」



それともこういうの、キモイ?
そういった、バチンと思いっきり叩かれた。

あー…はは、そりゃキモイか。
変な趣味してなさそうだし。
それとも俺だったから…か?



「自分の体をなんだと思ってんだ!金が欲しいなら働けどアホウッ」


「…は…?」


「体を売ろうなんざ間違ってんだろ、目ぇ覚ませっ」


「え…えぇー何なんだよアンタ…」



ちょっとやんちゃしてます、みたいな男前のくせに積極かよ。
なに、そういう不純なことが嫌いとか?

あー最悪だ。
とことんついてないなぁ俺。


でもさぁ…。



「俺、自分の体とかどうでもいいんだよね。とにかく金が欲しいの」


「……どうしてだ。バイトでもすればいいだろ」



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