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花火
※死ネタ/病気/攻め視点



「なぁ聞いたか?すぐ近くで今日花火大会あるらしいぜ」

「知ってる。入院してる僕たちにとって楽しみの一つだもん」

「あ、そうなん?この病室からも見えっかな…」

「方向もあってるし、見えると思うよ」

「んじゃ、俺そんときまた来るわ」



ここは、上の会話からも分かるように病院のある一室だ。
俺の小さいときからの幼なじみが入院しちまって、もう一年近く、俺はほぼ毎日ここへ通っている。


そんな中聞いた、花火大会の話。去年は母さんの実家に帰ってたから知らなかったけど、今年はここにいるから。

だからコイツと見たいと思った。




……そして夜、今日ばかりは遅くまで面会時間が延長されて、病院は見舞い客やら何やらでごった返していた。

人混みを抜け、アイツの待つ病室にいけばそこは静かで、個室っていいもんだとしみじみ思う。



「いやー屋上も人いっぱいで大部屋も混雑してるって騒いでたぜ」

「じゃー僕たちはラッキーだね」

「な。…横座るぜ」

「ん、うん」



窓の方へ体を向け、2人一緒に花火が始まるのを待つ。

チラリと横を一瞥すれば、一年前と比べてすっかりやせ細ったコイツが目に入った。


色も白く、少し強く抱き締めたら折れちまいそうな体。
でもスッと通った鼻筋は昔から変わりなく、遠くを見つめるその瞳にドキッとする。

……まぁ、なんだ、俺は男でコイツも男。だけど…もう5年近く、絶賛片思い中だ。


コイツを好きだと自覚したのは中2のころ。当時付き合ってた彼女は何かが違うと思い始め、そしてコイツといるうちに気がついた。

ああ…コイツといるのは幼なじみだからじゃねぇ。好きだから、そばにいたいと思っていたんだ…と。



「………あ、のさ…」

「……あ?」

「あんま見ないでよ。花火があがんのはあっち」

「あ、あぁ…わり」

「全く、僕に期待したって何も始まりませーん」



ツーンという態度をとられても、どうも可愛いとしか思えねぇのはコイツのことを好きだからだろうか?

ずっと、ずっと変わらない態度に笑いながら窓の外を見て、早くこの病室から出れるようになりゃいいのにと思った。



「あ、始まったみたい」

「お、たーまやー。なんつって」

「あはは、何でそれいうんだろーね」

「知らねー。楽しきゃいいんだよ」



ドン、ドンッと打ち上げられる色とりどりの花火。中にはハートだのキノコだの色んな形もあり、男だけど俺たちもその花火を楽しんだ。

ビリビリと体に響くこの感じ、なぁんかたまんねー。



「……綺麗だね…」

「ああ、花火は好きだな、俺」

「そうなんだ?僕は…あんま好きじゃない…っていうか、苦手」

「……は?そうなのか?」

「だって、凄く儚いものだと思わない?あれだけ人を楽しませておいて、最後は何もなかったように散っていく。
 ……儚くて、切なくて、綺麗だけど寂しいと思うな」



そういって花火を見つめるコイツの方が、どんなものよりも儚く感じた。
そして、瞳に映る花火が幻想的で綺麗だとも。


確かに…花火は大きな花を咲かせて散っていく。音もデケェせいで終わったときには寂しく思うかもしれねぇ。

でも……。



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