10月8日 土曜日、全は朝から図書館へやってきていた。緑も猫と一緒に館内で寛いでいて、全が中に入ればニャーと鳴きながらすり寄ってきてくれて。全は、ふにゃりと笑みを浮かべながらよしよしとその小さな頭を撫でた。 「おはようございます、全くん。そういえばストーカーの件、解決したらしいですね」 「はいっ、もう大丈夫です!」 「ふふ、おめでとうございます」 「最後痛い痛いしたって聞いたよ」 「ぅ…僕じゃなくて永久なの。でも、もう元気だよっ」 ストーカーがいなくなり、すっかり元通りになったことに全だけでなく、周りも安心する。特に成田は、ストーカー被害中なかなか全がきてくれず、ずっと心配していた。緑から話を聞くたびに全は無事なのかと心配し、緑から終わったと聞いても全を見るまでは落ち着けなくて。 この笑顔をまた見ることが出来て、本当によかったと思う。 「…でも、痛い痛いしたでしょ?」 「んぅ?」 「手、兄弟バチバチにやられたって、チュン太が」 「あ、んと、これも平気だよっ。僕強いもん!」 「ふふ、ほんとですね」 クスクス笑って頭を撫でれば、全は嬉しそうに頭を擦り寄せてきて。なぜか緑まで参戦して全の頭をぐちゃぐちゃにし、目が回ったところでヴヴヴと振動する音が響いた。 成田と緑は全を見る。成田は始めから携帯を持っていないし、緑は不携帯者だ。全も慌てて取り出してみれば、なんと火焔からメールが届いていて。 【今からこっちの寮にこれるか】 「ほうほうメラメラさんからですか」 「うん、なんだろう…?」 「なんとなーく予想はつくけどね!ゼンゼンゴーゴー」 「行った方がいいのっ?分かった!いってくるねっ」 あとでまたきます、と成田に告げれば、本を用意して待ってます、と。全は火焔にいくと返事をし、2人に手を振ってBの寮を目指した。木々の合間をのんびりと歩いていく。方向感覚が分からなくなりそうだが、まるでこっちだよ、というように木々が道を作ってくれるため、全は迷わずに着くことが出来た。 「こんにちはーっ」 「はぁい、…って、やだぁ全ちゃんじゃないの!」 「ちーちゃん!髪の毛縛ってないの、珍しいねっ」 「たまにはいいでしょ?どーお?似合うかしら?」 「可愛いっ」 「あぁん全ちゃんも可愛いわぁっ」 [*前へ][次へ#] [戻る] |