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 ペロリ、と口の端についたクリームを舐めとり、満足そうに腕を組み直して背もたれへ寄りかかる。まだ文句をいいたそうな全だったが、雪見が戻ってきてしまったため何もいえなくなってしまった。

 ここで律儀に玲一との約束を守るあたり、お人好しというか何というか、まぁ、そこが玲一に秘密を教えてもらった理由なのだろうが。



「おーい全ちゃん?食べないのぉ?お腹いっぱい?」

「ふぁ、た、食べるよっ!今すぐ食べるっ」

「あはは、焦んなくていいしぃ」

(また玲一にとられちゃうもんっ)

(…とか思ってんだろどうせ。アホらし)



 それからはあっという間だった。何せ、玲一がほとんどかっさらっていってしまったのだから。お会計を済ませた雪見にごちそうさまでしたとお礼をいい、外に出て車のあるところまで移動する。

 その、途中。



「…、全?」

「え?…うぉ、全チャンじゃーん」

「う、ぁ、翼先輩!流歌先輩…!」



 横についた車から声をかけられ、なんだ、と振り返ってみればそこには翼たちが。奥の方には雷火もいて、少し怖い顔で全を…いや、全の後ろを睨みつけていた。小首を傾げる全の後ろ。玲一は機嫌が悪そうに翼たちを睨みつけ、雪見は警戒心丸出しでこれまた翼たちを見つめている。

 けれど、やはりというか全は。



「翼先輩たちもお出かけですかっ?」

「ええ、まぁ。もう帰るとこですが…」

「じゃーさっさと帰ればいいじゃーん。いこぉ全ちゃん」

「さっさとしろチビ!」

「チビじゃな、」

「ふふ、醜い嫉妬ですねぇ。それに何ですか?全はただのチビではなく、とてもちっちゃくて可愛らしい全、なんですよ。分かりませんかねぇ」



 まるで、子供ですね、とでもいいたげなその言い方。それに玲一だけでなく雪見も少し反応を示したが、ここで一番反応すべきは全だろう。だが本人はもう少ししたら大きくなるもんと意気込んでいて、嫌みをいわれたことに気づいていない。



「大体、Hが気軽にGに話しかけるってどぉなのぉ?」

「全は別ですよ。そもそも全からきてくれたんですから。あ、知りませんでしたか?」

「っ、…し、てたけどぉ」

「全、全はまだ用事が?」

「んーん、もう帰るとこですっ」

「なら私たちとどうですか?せっかく全と会えたんですから、もう少し一緒にいたいです」


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