11 ペロリ、と口の端についたクリームを舐めとり、満足そうに腕を組み直して背もたれへ寄りかかる。まだ文句をいいたそうな全だったが、雪見が戻ってきてしまったため何もいえなくなってしまった。 ここで律儀に玲一との約束を守るあたり、お人好しというか何というか、まぁ、そこが玲一に秘密を教えてもらった理由なのだろうが。 「おーい全ちゃん?食べないのぉ?お腹いっぱい?」 「ふぁ、た、食べるよっ!今すぐ食べるっ」 「あはは、焦んなくていいしぃ」 (また玲一にとられちゃうもんっ) (…とか思ってんだろどうせ。アホらし) それからはあっという間だった。何せ、玲一がほとんどかっさらっていってしまったのだから。お会計を済ませた雪見にごちそうさまでしたとお礼をいい、外に出て車のあるところまで移動する。 その、途中。 「…、全?」 「え?…うぉ、全チャンじゃーん」 「う、ぁ、翼先輩!流歌先輩…!」 横についた車から声をかけられ、なんだ、と振り返ってみればそこには翼たちが。奥の方には雷火もいて、少し怖い顔で全を…いや、全の後ろを睨みつけていた。小首を傾げる全の後ろ。玲一は機嫌が悪そうに翼たちを睨みつけ、雪見は警戒心丸出しでこれまた翼たちを見つめている。 けれど、やはりというか全は。 「翼先輩たちもお出かけですかっ?」 「ええ、まぁ。もう帰るとこですが…」 「じゃーさっさと帰ればいいじゃーん。いこぉ全ちゃん」 「さっさとしろチビ!」 「チビじゃな、」 「ふふ、醜い嫉妬ですねぇ。それに何ですか?全はただのチビではなく、とてもちっちゃくて可愛らしい全、なんですよ。分かりませんかねぇ」 まるで、子供ですね、とでもいいたげなその言い方。それに玲一だけでなく雪見も少し反応を示したが、ここで一番反応すべきは全だろう。だが本人はもう少ししたら大きくなるもんと意気込んでいて、嫌みをいわれたことに気づいていない。 「大体、Hが気軽にGに話しかけるってどぉなのぉ?」 「全は別ですよ。そもそも全からきてくれたんですから。あ、知りませんでしたか?」 「っ、…し、てたけどぉ」 「全、全はまだ用事が?」 「んーん、もう帰るとこですっ」 「なら私たちとどうですか?せっかく全と会えたんですから、もう少し一緒にいたいです」 [*前へ][次へ#] [戻る] |