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 …と、いうことで。善は急げ、というか撮影がもう明日に迫っているため、3人は放課後、生徒会室までやってきた。仕事中だろう陽介だが、3人の訪問に快く応えてくれ、弘人にも話がしたいといえば呼び出してくれ。

 全の不安げな、永久と望の強張った表情に何かを察してくれたのかもしれない。珍しくいた玲一も何もいわずにジッと全を見つめてくるだけだ。



――コンコン

「きたでぇー…って、あれ、全チャンたちもおるやん、どないしたん?」

「すまない、音無たちから話があるそうだ」

「なんやなんやー、…もしかしてあのことか?」

「「あのこと?」」

「ストーカー受けとるんや、全チャン」



 な、と明るい感じでまさに本題を切り出した弘人に、永久たちは頷く。ストーカー。そのことに陽介と雪見は目を見開き、玲一はアホらしい、といった様子を見せ目を瞑ってしまった。

 だが、全はそんな周りの様子よりも包帯でぐるぐる巻きにされた弘人の手の方が気になってしまい…。



――ぐしゅ、

「おてて、痛い…?」

「あーこれな、まぁデカい傷は特になかったさかい、その内すぐ治る…て、な、なんで全チャンが泣きそうな顔しとるん!?」

「ええーっ、泣かないでぇ全ちゃーん」

「うぇぇ、だって、包帯凄いも、」

「手やから仕方なくやって!痛ない痛ない、大丈夫やでー」



 切り傷はたくさんあるが、本当に大丈夫なのだ。手先という包帯のやりにくい場所だったがために、大げさに巻かれているだけ。確かに不便なことはあるが、それも可愛い子猫チャンたちが甲斐甲斐しく面倒を見てくれるため、弘人にとってはまさしく怪我の巧妙といったところか。

 そんな、怪我をしたわけでもない全が泣くことではない。…といいたいところだが。



「…実は、多分それも全のストーカーのせいなんです」

「なぜ、そう思う?」

「手紙が…。こんなすぐ動くとは思わなくて、注意が遅れてしまいました」

「どっれどれぇ?…うわぁ、ヒロの手ぇ消してやる…って書かれてるしぃ」



 真っ先に手紙に手を伸ばした雪見は、内容を読んでニヤニヤと弘人を一瞥した。どうせ全ちゃんにイタズラしたんでしょ、そのバチが当たったんだよといいたげな顔だ。だが全は、これのせいで弘人が怪我をしてしまったことを、酷く悔い、怯え、悲しんでしまっている。怪我をした手を見てその気持ちがより増してしまった。


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あきゅろす。
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