4 「楽しいかよ」 「うんっ、お部屋見るの好きっ」 「…よく見て、よく覚えとけ。その方が過ごしやすいだろ」 「ふぇ?」 「いんや、何でもねぇ」 ニヤリ、と口角があがる。確実に何かを企んでいるのが見て分かるが、全は「お泊まりだもんね!」の一言で片付けてしまい、その火焔の様子に気づくことはなかった。ソファーに腰掛け、コーヒーを啜りながらちょこちょこ部屋の中を動く全を見つめる。 好きにさせてはいるが、その目はどこか全を観察しているようで。ああ、もしここに永久や望がいたら、すぐにでも全を連れて逃げるだろうに。 「わぁ、本がある!お洋服ばっかだね、これ」 「勝手に見ていいぜ」 「ありがとぉ!僕もね、本持ってきてるんだっ。あとで火焔に見せてあげるねっ」 「…いらねぇよ…」 (本、読めってか、この俺が) ねぇな、と心の中で呟きつつ、興味津々といった様子でファッション誌を見ている全を見つめる。目に止まるのは、やはり右目を覆う眼帯で。火焔はツ…と指で唇をなぞりながら、その唇をゆるり、と弧を描くように持ち上げた。 獣が獲物を狙う目ではない。既に捕らえ、これからどう料理していくか吟味している目だ。…そう、もう、ここは檻の中。火焔によって捕らえられたことに、果たして全は気づくのだろうか。 「…おい」 「なぁにっ?」 「昼、なに食いてぇ」 「んーっとねぇ、んーっと、…メニューないのっ?」 「ねえ。好きなもんいってみろ」 お昼の時間になり、全をずっと観察していた火焔は、ようやく声をかけてきた。それに全はようやく散策を止め、火焔の横に座って何にしようかな、と考える。サッパリしたものがいい。そうなると、冷やし麺類か。 「冷たいうどんがいー!」 「注文の仕方教えるから覚えろ。次からは自分でやれ」 「…ぅ?食堂、いかないの?」 「部屋からは出んな」 「なんでぇ?」 「何でもだ、ぜってぇ出るな」 「変なのっ」 ぷく、と頬を膨らましてそう拗ねる全に、火焔は目を細め、思案するように全を見つめた。しかし全に名前を呼ばれてハッとしたように意識を戻し、内線の使い方を教えていく。 各トップは特別に部屋まで運んでもらえるのだ。軽く使い方を教え、全と自分のお昼を頼み、それがくるのを待つ。全は、凄い凄いと大はしゃぎだ。 [*前へ][次へ#] [戻る] |