2 シュン…と落ち込んでしまった全に永久は慌てる。過保護。自分でも痛いほどそれは感じているが、全相手だとどうしても過保護になってしまうのだ。しかし、全も高校生。ここは何もいわず見送ってやるべきなのか…。 そう考えつつもまだ頷けないでいた永久の背を押したのは、…泣きそうに潤んだ全の目だった。 「いきた、い」 「全…はぁ、分かった。ごめんね色々いって。全の好きにするといいよ」 「…ほんと?いっていい?」 「うん。…ただし、何かあったらすぐ僕か望に連絡すること。いいね?」 「うんっ!永久、大好きっ」 笑顔でギューッと抱きつき、早速返事を返す。どこへ、何日泊まるのか。勝手に携帯を見てしまおうと考えていた永久だったが、全が握り締めていてなかなか手放さない。まぁ、せっかくの夏休みだし、いいか。そう軽く考えるようにし、全の泊まりの準備を手伝うことにした。 着替えに歯ブラシ。それから持っていきたいといった本と課題をバッグに詰め込み、準備完了。…と。 ――ブーッ、ブーッ 【誰にも見られずBの裏にこい。俺からのメールは消して、ケータイも部屋に置いてこい】 「僕、いってくるっ」 「気をつけてね。…早く、帰ってきてね」 「うんっ、バイバイッ」 素面のときに読めば、やはりどこかおかしな内容のメール。しかし相手は全で、しかもお泊まりということに浮かれていて。しっかりメールを消し、携帯を机の上に置いて部屋を出た。…このとき、その行動に永久が気づいていれば、この先の未来も変わっていたのかもしれない…。 (…まぁ、名前いえないってなると…副会長とかかな。Hの松崎さんか、あるいは成田さんか…) 全の知り合いで、名前をわざと伏せそうな人をポン、ポンとあげていく。BやHとなるとキリがない気もするが、有力なのはこの3人。それなら平気かもしれない。そう考え、永久は全を見送るのであった。 寮を出て、森の中へ足を踏み入れた全。誰にも見られず、とのことだったのでこの中を通っていくことにしたようだが、本来ならそれはとても無謀なことで。木しかない。そんなところを歩けば方向感覚を失うだけ。 だが…全は迷わずBの寮まで辿り着くことが出来、コソコソと裏手へ回り、そこで待っていた火焔を見つけて嬉しそうに飛び出した。 [*前へ][次へ#] [戻る] |