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「いいのかよ、いかせて。変な知恵とか知識?植え込まれるかもだぞっ」

「そうだけど…でも、全なら大丈夫な気がするんだよね。うん、大丈夫」

「そっか。まー永久がいうなら大丈夫だな。永久ほど人のことよく見てるやついねーしさ」

「なにそれ気持ち悪い。望に信頼されても困る」

「うぉぉい!オレの扱い酷くね!?」

「別に、全以外はみんな同じだけど」



 その全にだって、最近はそんなにうるさく心配はしてない…はず。永久はギャーギャー喚く望をシカトし、全に思いを馳せながら寮へと帰るのであった。

 そして、全は。一度2階までおりたあと、そのまま食堂を突っ切り、今度は階段を使って上まであがっていった。放課後になったばかり、ということもあってまだHの生徒も多く、睨みつけられたり怯えられたりもしたが、無事に屋上へたどり着けた。



――ギィ、…ゴォッ

「っ、わぁぁっ!」

(風強いーっ)



 外へ出てみると、窓から外を見て感じていたよりも風が強く、体重の軽い全は思わずよろけてしまった。髪もあっちへこっちへと飛び交い、目の前がよく見えない。どうしよう、と全が困り果てていると、その風が、少しだけ弱まった。



「う…?」

「……全」

「小雨っ」

「外、全…無理。中、入れ」

「ううっ、ビックリしたの…」



 どうやらあの強風の中、外にいた小雨が全に気づいて壁になってくれたらしい。全は風が弱まっているうちに中へ逃げ込み、小雨もそのあとについて入り、ドアを閉めた。その際、ヒュオオオ、と風の音がして、全は思わず肩をビクつかせる。



「…風、強かったの。小雨、…お外にいたのっ?」

「ん。…奥は、弱い」

「ここだけ?」

「高嶋、の、せい」



 高嶋、といわれてもイマイチピンとこないのか、全は首を傾げて頭を捻らせた。…そう、この風は、翼の力の余韻のせいだ。これでも弱まった方なのだが、Hの屋上でぐるぐると竜巻のように強い風が吹き荒れ続けている。奥の方は弱まっているとはいえ、能力で多少相殺しないと小雨でも普通に歩いていくのは無理だろう。



「…全、待ってた」

「んぅ?…っと、いーこいーこっ」

「……ン…」



 屋上へ続く階段の一番上に2人で座り、小雨が素直にそういうと全は手を伸ばして頭を撫でてくれる。目を細めてそれに甘んじていると、ピタリと動きが止まり、なぜかシュンと落ち込んでしまった。


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