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「オレも、森羅万象を守りたくてHに入ったんだぜ」

「野田先輩、も?」

「ああ、知ってるだろ?今までBに捕まった森羅万象がどんな目に合ったのか。オレは許せねぇんだ、人をモノとして扱うなんざ、最低野郎のすることだ。なぁ!」

「ふぇっ」

「まーもし今の森羅万象が好き好んでBにつくっつーなら、そんときゃ敵になるけど。そうじゃねぇならオレは全力で守ってやるぜっ」



 ニシシ、と笑顔を見せる雷火に全は少しだけ目をキラキラと輝かせた。裏のない、曇りのない雷火の言葉は全にもしっかりと届いたのだろう。本気でそう思っていることが、痛いくらい伝わってくる。

 そして、最後の1人は。



「私がHにきたのは、父の影響です。幼いころから森羅万象は保護するべき対象だと聞いて育ちましたから、森羅万象の力をどうしたい、という気持ちは特にないんですよ」

「みんな、森羅万象守りたいのっ?…なんでも出来る力、持ってるのに、何もしてもらわなくていーのっ?」

「そうですね…欲をいえば、してもらいたいことはあります。世の中の紅茶を総て私のもとへ集めさせたい、などね。ですが、何かを望むたび、森羅万象の命は削られていきます」

「オレだって強くなりてぇけど、人の命使ってまでなるもんじゃねーし、自分次第でなんとかなるしなっ」

「世の中の犯罪をなくしてほしいと俺も思う。森羅万象を保護することで、世の中はよりよくなるだろう」



 みんな、別に望みがないわけではない。けれど、人の命を削ってまで叶えようとは思っていないのだ。あくまでも保護し、不埒な輩から守ることだけを考えている。Gの『どうでもいい』『関係ない』といった意見とはまた少し違うHの意見に、全は不思議な気持ちになった。



「まぁ俺も、目ぇ治してほしいとか、あいつより強くなりてぇとか思うとこはあるけどサ…それじゃ、ダメなんだよナァ」

「…ダメ?」

「森羅万象の力を使えば、またバカにされる。強くなりてぇけど、それじゃダメなんだ。自分の力で勝ちてぇ。…っ、こんな弱い俺、かっこわりぃよな全チャン」

「っ、んーん!あのね、流歌先輩は優しい人だと思うんですっ。だから、かっこいいです!」

「…ははっ、ナニソレ、サンキュー全チャン」



 眉を垂らして笑う流歌に、翼たちは暖かな視線を送る。そして、なんの計算もなく、正直なままをいってくれた全に心から感謝をした。…流歌は、人に嫌われることを、見放されることを酷く怖がるから。


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