4 そして待つこと数分、返事はすぐに帰ってきた。ブルブル震えた携帯にまだ若干驚きつつも、画面を開いて送られてきたメールに目を通す。 【全から誘ってくれるなんて嬉しいです。では本日のお昼休み、一緒にご飯でも食べながらどうでしょうか?】 【お願いします】 【分かりました。迎えを寄越しますので、教室で待っていて下さいね】 メールの相手はHのトップ、翼だ。お昼休みに会うことが決まり、全は永久たちへようやく視線を向けて、そのことを伝えた。「おいおいおい…」と望があまりいいとはいえない反応を返してきた…が。 「…そう、分かった。気をつけてね」 「ちょ、永久!?いいのかよっ」 「止めても無駄だろうし、…聞きたいんでしょ?森羅万象のこと」 「ふぁ、なんで分かったのっ?」 「ふふ、…色んな人の意見、いっぱい聞いておいで、全。でもね、流されちゃダメだよ。自分の意見をしっかり持ってなきゃダメだからね。全は…僕は全に、そのままでいてほしいから」 いつもは反対する永久が、Hへいくことに賛成を示した。そのことに望が驚くも、永久は真剣な顔つきで、そう続ける。何のことか恐らく全はよく理解しきれてないだろうが、それでも真剣な様子に、全も頷き返した。 それに笑顔を浮かべて席へつこうとする永久を、望が慌てて追いかける。 「さっきの、どういう意味だ?」 「全ってさ、純粋で真っ白だよね」 「あ?あぁ、うん」 「でもそれって無知故なんだと僕は思うんだ。…僕たちは綺麗なものも汚いものもいくらか見てきたでしょ?それで、今の僕たちがある」 純粋なままとはいえないが、どちらも受け入れて今の自分になったのだ、と永久は続ける。そして今、全はそれを突きつけられてるのだと。小さなころから色々見てきたことを、全は今総て見せられ、混乱しているのだろうと。 …知らなければいけない、世の中の汚いところも。それを知り、また一つ大人になる。全の場合は大人になる階段を一気に飛ばすため、一気に様子が変わってしまうのだろう。でも、受け入れて、それでいて変わらず純粋な心を持っていてくれたら、全は全のままでいられるかもしれない。 「…なんて、難しい理屈とかよく分かんないいいわけつけてるだけかな」 「…?」 「願望だよ。総てを知った上で、僕たちのもとへいつも通りの全が戻ってくればいいな、っていう」 [*前へ][次へ#] [戻る] |