3 「…全ちゃんは?どぉしたいのー?」 「ふぇっ、僕?!…ぅと、…」 (僕、は、何したいんだろぉ…) 命を代償にするとはいえ、何でも出来るこの力。周りのことを気にするあまり、自分の気持ちを考えていなかった全は、段々と首を横へ傾げていき、しばらくしたあと「分からない」と口にした。 したいことはない。でも、それは今の自分の意見。それに、何が出来るのかイマイチ分からないのだ。全の中に、悩みの種がもう一つ出来てしまった。モヤモヤする感情を払うかのようにジュースをグイ、と飲み干し、残りを食べ進める。 なんでこんなことを聞いているのか。永久たちは結局分からないまま、朝食を終えて学校へ向かうことになった。 「…変」 「へんん?」 「違う、全だよ。どっからどう見ても変でしょ」 「あー…な。森羅万象のこと気にすんのはいいんだけど、急だし様子がなぁ」 「悪影響とか受けなければいいんだけど…」 教室へやってきた永久たち。全はすぐ自分の席につくも、心ここにあらずといった様子で外をポケッと眺めている。そんな全を見て永久たちは少し離れたところで話をするも、理由がさっぱりなために何ともいえないようだ。 森羅万象に興味を持つのは成長段階で避けて通れないこと。そこでどう感じるかにより、HやBの派党へ入ることにもなるのだから。でも全は始めからどこか思いつめた様子で、それが悪い方へいかなければいいなと2人は思う。 …そんな2人を尻目に、全は頭の中でやはり森羅万象のことについて考え込んでいた。 (永久とか、弘人先輩たちはどうでもいいのかぁ) そっかぁ、と意識をふわふわさせたまま思う。そして、なら他の人は?とも。Gの意見だけでなく、HやBの意見も聞いてみたい。…いや、森羅万象として聞いておくべきだ、と全は考える。全の中で、自分が森羅万象ということにもう疑いはない。はっきり誰かにいわれたわけではないが、感覚として、しっくりくるのだ。 「…ぁ、そーだっ」 (こういうときにメールするんだった!) 最近ようやく使いこなせるようになってきた携帯を取り出し、それでも多少詰まりながらメールを作成していく。永久たちが不思議そうに見ていることにも気づかず、全はメールを送信した。 【おはようございます。えっと、会って聞いてみたいことがあります】 (よしっ) うん、と小さく頷く全に、それを見ていた人は心癒されたことだろう。 [*前へ][次へ#] [戻る] |