7月12日 森羅万象 本来なら今日からまた通常授業に戻るのだが、Gは学園祭優勝のご褒美として今日も休日となる。そのため全は、久しぶりに図書館へときていた。 「綿飴はね、甘かったの!たこ焼きいっぱい作ったよっ」 「お疲れ様です。火傷とかしませんでした?」 「うんっ!…あ、あのね、せっちゃんのクラスもいったんですっ」 「せ…?」 「動物さんいっぱいで可愛かったの!」 (ああ、瀬戸くんですか) 心の中で納得する成田。本を返してから全はずっと、学園祭の話をしていた。楽しそうに話す全に成田も笑顔で聞いてくれ、それが嬉しいのかもっと笑顔で全も話をして。いきたかったです、と漏らした成田に、全はキョトンと小首を傾げた。 「お仕事、忙しかったの…?」 「ええ、そんなとこです。…それよりオススメの本、また私が選んだものでも…?」 「はいっ!成田さんが選んだの、どれも面白いですっ」 「ふふ、嬉しいですね」 クスクスと笑いながら本をまた選び、全へ渡していく。このまま1冊読み始めてしまおうか、と一番上の本を手にとった全だが、ふと思い出したことがあり、成田を見上げた。どうしましたか、と成田も不思議そうに見つめ返してくる。 「えと、また能力の本、読んでみたいですっ」 「…ああ、以前一回読んだだけでしたね。そうそう、次にオススメというか読みやすいものを、私も選んでおいたんです」 「ほんとぉっ?」 「はい、では上にいきましょうか」 以前は、絵本のようなもので "能力" について読んだ。そのとき読めなかった本がまだあり、それよりももっと分かりやすいものを次読むときに渡そうと、成田も吟味しておいたのだ。 2人で上にあがり、数ある能力の本の中から、成田は前回より少しだけ絵よりも字の多い本を取り出し、全に渡した。 「前回は森羅万象について読もうとして、時間になってしまいましたよね?」 「しんらばんしょー…?んと、よく分かんないから、多分そうっ!」 「でしたらこれを。分かりやすく纏めてありますよ。それから、他の本も読んでみるといいと思います」 「ありがとうございますっ」 全はペコリと頭を下げながら本を受け取り、その階にあるイスに座って表紙を捲った。ス、と中に入っていく全を成田は見つめ、そして下へおりていく。本を読んでいる人の邪魔をするのは邪道だ。 この本を読み終わったとき、全は森羅万象についてどう思うのか。感想を聞いてみようかなと思う成田であった。 [*前へ][次へ#] [戻る] |