11 手で、先ほど見たであろう画像と同じように2つを表し、にぱ、と笑みを雪見へ向ける全。心からの好奇心や興味がヒシヒシと伝わってくる。だが、そんなことよりも今は、"この" 全の態度の方が気になってしまう。雪見だけじゃない。陽介やシエル、そしてうるさそうにしていた玲一までもが目を見開き、全を凝視していた。 「ぅ…?」 「それが、ある日突然性格が変わった…戻った?みたいで。今じゃこっちが全の "普通" になってるんです」 「…そうか。いや、それはいいことじゃないか?無関心なんて自分も周りもつまらないだけだろうしな」 「ほんとぉ、笑顔ヤバァイ!チョー可愛いんですけどぉ、なにこの子ぉっ」 「可愛い…えと、先輩?も、可愛いっ」 横からギューッと雪見に抱き締められた全は、少し苦しそうにしながらもそういった。可愛い、とは、ちっちゃくてほわほわしてるもの、きゅんきゅんするもの。そんな抽象的な感じに教えられていた全は、雪見もそうだと思ったのだろう。全に誉められた雪見は、嬉しそうに笑みを返し、「朝ちゃんか雪ちゃんって呼んで」とお願いした。 「う…朝ちゃん?」 「っ、か、わい…!絶対うちより可愛いってぇ。色々ヤバいねぇこれぇ」 「はっ、テメェは性格がヤベェもんなぁ」 「うるさいしぃ。レイちゃんは黙っててぇ」 むす、としながらも離れようとしない雪見に、永久たちは苦笑を浮かべる。そして、中をちょっと見渡して望は1つ疑問を持った。あのー…と遠慮がちに話に入っていき、聞いてみる。 「六条先輩はいないんスか?」 「…ああ、邦弘は部活だ」 「生徒会で唯一部活入ってるからねぇ。成績残さないといけないしぃ?」 「はー…そうでしたか」 「確か、剣道でしたよね?」 「永久ちゃんさっすがぁ!」 六条は役員にして唯一部活に入っているメンバーでもある。本来なら生徒会の仕事が忙しくて部活どころではないのだが、彼の家が剣道の道場ということもあり、部活に入ることを親に強制されているのだ。それでも生徒会の仕事もきちんとこなしているのだから、六条もやはり凄いといえる人なのだろう。 「にしても、綿飴ねー」 「ふわふわ、甘い飴!」 「んー知ってるぅ。でもうち、甘いのはなぁ…」 ――ピク、 「…?」 辛いものの方が好きなんだよね、という雪見の言葉は、全の耳には入ってこなかった。"甘い" という言葉にほんの僅かに反応した彼を、不思議そうに見つめる。その視線に気づいたその人は少しだけ目を見開き、舌打ちをした。 [*前へ][次へ#] [戻る] |