3
「おー特に3年はほとんど知っとるで。全チャン誘惑説とか最強説とか色々あるみたいやけど」
「誘惑なんて…するはずないのに」
ほんと最低、と永久が吐き捨てると、全が真似をして『最低』と呟いた。自分にいわれたわけではないがなんだか心にグサッとくるものがあり、弘人は苦笑を浮かべる。あのとき弘人は1階にいた、…にも関わらずしっかり伝わっているとこを見ると、しばらくは全も色々といわれそうだ。
「まー、最強っちゅーのは何や当てはまりそうやけどなぁ」
――ナデナデ
「違いますー全は最強じゃなくて最高なんですー」
「ははは!なんやその親ばかみたいなセリフはっ」
「違っ、…全?」
「ん?なんや?」
ひょこ、と言い合う2人の間に伸びてきた全の腕。それは弘人の方へ向かって伸びていて、手には何かを持っている。弘人は目をまあるくしてそれを見つめ、それでも引こうとしないことに気づいて中のものを受け取った。それは、いつだったか弘人が買ってあげたハイチュウで。
そのときのものかは分からないが、受け取った弘人は珍しそうに全を見つめた。いや弘人だけではない。望も永久も、何の意味があるのかと全を見つめている。
「…ガム」
「くれるん…か?」
「…ん」
「…ふっ、はは、おおきにな!何やメッチャ嬉しいわっ」
そういってまた全の頭をナデナデ。するとどこか嬉しそうな雰囲気を全は出し、弘人はニタァと笑って顔を近づけた。だがもちろん永久たちがそれを全力で止め、弘人を睨みつける。
「何しようとしてんですか」
「えー今の流れてキスちゃうん?全チャンも嬉しそうにしとったし」
「全が抵抗しないからって手ぇ出さないで下さいよ!あっぶねーあっぶねー、永久、もう部屋いこうぜっ」
「そうだね」
「はは、全チャーン、チューしたなったらいつでもワイんとこきぃやー」
ヒラヒラと手を振って。全を連れて立ち去る2人にもニヤニヤと笑みを浮かべて見送り、弘人は満足げに中へ戻っていった。そのあと食べたハイチュウは、今まで食べたどんなものよりも甘かったという。
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