5月15日
いつものように朝食をとり、部屋へ戻ってきた全たち。しかしこれもいつものことというか、全はせっかく戻ってきた部屋を出ていった。あいにく永久はそれに気づかず、誰に止められることもなく昨日と同じ場所を目指す。
Hの校舎の屋上。今日は誰にも会わずにやってこれた。
――ギィ
「…ワンワン」
「っ!…テ、メェ…」
屋上には、いつもの場所にワンコがいた。ほんの少し、それはきっといつも一緒にいても気づけないほどほんの少し嬉しそうに口元を緩め、全は男の方へ向かう。今は9時過ぎたところ。一体この男はいつからいたのか。全を見て睨みつけているが、こちらも少し嬉しそうだ。
全は、ストンと男の横に座った。
「……な、んで…」
「……」
「…なんで、今までこなか、た」
「…?」
「一週間、だっ」
グルル、と唸る男。それは極当たり前のように横へ座った全を見て、無意識のうちに出た言葉だった。『どうして一週間もきてくれなかったの?』と。その意味合いに2人は気づくことはなかったが、キレている、というよりは拗ねているらしい男に全は少し焦りを見せた。
怖いわけじゃない。なだめなければ、とでも思ったのか。
「っ…、ぅ?…うぅ…っ?」
「な、にして…」
――ゴソ、ガサゴソッ
(…理解、出来ねぇ…)
ポケットを探り、体をペタペタ触って何かを探している様子の全。男は器用に片眉を持ち上げ、髪をグシャグシャとかき乱しながら溜め息をついた。睨めば人はこの顔を恐れて寄ってこない。それでも付きまとう奴がいれば、今まで手加減せず伸してきたのに。
自分も、全も。どちらも理解出来ないなんて初めてだ。
やがて全が立ち上がり、服をバタバタさせ始めた。それを見かねた男はいつぞやのことを思い出し、ズボンのポケットに手を突っ込んで丸いソレを1つとりだし、乱暴に全の前へ出す。
「ん…?」
「…ン」
「……ガム」
「…ちげぇ、アメだろ」
「アメ」
ああ、ガムを探していたのか、なんて思うよりも、アメを見てガムとたとえた方が男にとっては驚きだった。けれど全がそれをそっと受け取り、手の中で転がして眺め、その次にした行動により驚かされることになる。
パチ、と目が合った。と思ったら…。
――ナデ、ナデ
「っ…!?」
「アメ、さんきゅー…な?」
「…っ、さわ、んな…!///」
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