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「だからぁ、よければいるぅ?」

「……(コクッ)」

「よかったぁ、どーしよーって思ってたんだよねぇ。それ有名なとこのだからぁ、絶対美味しいとは思うよぉ」

「…あ、りがとう」

「やーだぁ、お礼なんていーしぃ!」



 あはははっ、と笑う雪見はどこか嬉しそうだ。笑顔のまま全の空いてる手を掴み、いこっか、と促してくる。しかし全は動かず、今度は玲一を見つめていた。無表情で見つめられた玲一は少し警戒しつつ、全を睨み返す。



「んだ、テメェ」

「……いる?」

「…はっ!?」

「ケーキ」

「い、いらねぇよクソがっ!なにいってんだテメェッ」

「あははっ、レイちゃんがケーキとかありえなぁいっ!全ちゃんどぉしちゃったのぉ?」



 ケラケラ笑う雪見に、顔を真っ赤にして噛みついてくる玲一。確かに彼の容姿からはケーキなんて可愛らしいもの、甘いものを好むとは思えないし、誰もそう思わない。けれど全は聞いた。

 …全の目には、玲一が羨ましそうにケーキを見ているように見えたのだ。だからキョトンと玲一を見上げ、首を傾げている。



「っ…うぜぇ。俺は先いくからなっ」

「ボディガードありがとぉ」

「したくてしてんじゃねぇよチービッ」

「んもぉ、社長には逆らえないくせにねぇ?スッゴいワガママはいうけどぉ、レイちゃんも怖い人じゃないからねぇ」

「……」

「…じゃ、うちらもいこっかぁ」



 ズンズンと足音を鳴らして消えていく赤い髪に、全はパチクリと見つめたまま、雪見の言葉に頷いて歩き出した。先にエレベーターに乗ってしまった玲一にはお別れはいえなかったが、雪見とは3階のおりたところでしっかり別れを告げ、全は部屋に戻った。



「お帰り、全。…それは?」

「…ケーキ」

「ケーキ?誰からもらったの?」

「…も、モデ、ル…?」

「えっ…と、モデルって…」



 一体誰のこと、と永久は不審そうにケーキを見つめたまま首を傾げた。誰からもらったのかハッキリしないケーキを、全が食べるなんて危険すぎる。人気者や顔のいい人たちは、人にもらうものには十分気をつけなければいけないのだ。

 たとえば盗聴器やカメラだったり、食べ物なら怪しい薬だったり。よくも悪くもそういうことはたまにあるので、永久は全が手渡されたケーキが怪しくてしょうがないのだ。食べたそうに箱を見つめる全をうまくなだめ、永久は望を呼んでどう思うか聞いてみた。


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