6 「だからぁ、よければいるぅ?」 「……(コクッ)」 「よかったぁ、どーしよーって思ってたんだよねぇ。それ有名なとこのだからぁ、絶対美味しいとは思うよぉ」 「…あ、りがとう」 「やーだぁ、お礼なんていーしぃ!」 あはははっ、と笑う雪見はどこか嬉しそうだ。笑顔のまま全の空いてる手を掴み、いこっか、と促してくる。しかし全は動かず、今度は玲一を見つめていた。無表情で見つめられた玲一は少し警戒しつつ、全を睨み返す。 「んだ、テメェ」 「……いる?」 「…はっ!?」 「ケーキ」 「い、いらねぇよクソがっ!なにいってんだテメェッ」 「あははっ、レイちゃんがケーキとかありえなぁいっ!全ちゃんどぉしちゃったのぉ?」 ケラケラ笑う雪見に、顔を真っ赤にして噛みついてくる玲一。確かに彼の容姿からはケーキなんて可愛らしいもの、甘いものを好むとは思えないし、誰もそう思わない。けれど全は聞いた。 …全の目には、玲一が羨ましそうにケーキを見ているように見えたのだ。だからキョトンと玲一を見上げ、首を傾げている。 「っ…うぜぇ。俺は先いくからなっ」 「ボディガードありがとぉ」 「したくてしてんじゃねぇよチービッ」 「んもぉ、社長には逆らえないくせにねぇ?スッゴいワガママはいうけどぉ、レイちゃんも怖い人じゃないからねぇ」 「……」 「…じゃ、うちらもいこっかぁ」 ズンズンと足音を鳴らして消えていく赤い髪に、全はパチクリと見つめたまま、雪見の言葉に頷いて歩き出した。先にエレベーターに乗ってしまった玲一にはお別れはいえなかったが、雪見とは3階のおりたところでしっかり別れを告げ、全は部屋に戻った。 「お帰り、全。…それは?」 「…ケーキ」 「ケーキ?誰からもらったの?」 「…も、モデ、ル…?」 「えっ…と、モデルって…」 一体誰のこと、と永久は不審そうにケーキを見つめたまま首を傾げた。誰からもらったのかハッキリしないケーキを、全が食べるなんて危険すぎる。人気者や顔のいい人たちは、人にもらうものには十分気をつけなければいけないのだ。 たとえば盗聴器やカメラだったり、食べ物なら怪しい薬だったり。よくも悪くもそういうことはたまにあるので、永久は全が手渡されたケーキが怪しくてしょうがないのだ。食べたそうに箱を見つめる全をうまくなだめ、永久は望を呼んでどう思うか聞いてみた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |