[携帯モード] [URL送信]
13
 困ったような笑みも、美人がやると様になる。永久はキッチンの中へと消えていき、ソファーには全と望が残った。なんとも座り心地のいいソファー。座ったときに身が沈んだのには全も少しだけ反応を見せたが、それを見た者はいなかった。

 沈黙。だが望はニコニコと全を見つめている。そして永久がカップを3つ持って戻ってきて、全の横へ座った。美味しそうなハーブティー。全はそれを受け取り、一口飲んでまた視線をさまよわせた。



「音無くん…全って僕も呼んでいいかな?」

「はい」

「じゃあ僕のことも永久って呼んでね?それで、全の部屋は左。荷物は昨日届いたよ、片付け手伝おうか?」

「いいな、みんなでやりゃすぐ終わるし」

「……」

「…あ、でもその前にお昼だよね。コンビニで買ってここで食べようか」



 食堂は夜いこう。そう提案する永久に、望がじゃあいくぞ!と張り切って立ち上がった。…が、望だけ。え、と永久を見る望に、彼はサラリとこういった。



「じゃあよろしくね、望」



 適当に買ってきてくれればいいから、そういったのだ。望はショックを受けた顔をしたが、動こうとしないもう1人を見て諦めたように部屋を出て行った。そしてしばらくまた沈黙。永久はお茶を飲み干してから、全に声をかけた。

 来るまで片付けをしてよう。ついておいで、と。

 個室にはベッドと勉強机、本棚が備え付けられていて、服はクローゼットへしまうようになっていた。理事長の部下が必要そうなものをまとめたダンボールは全部で3箱。永久は全が荷物を机の上に置くのを待ってから、一つ目の箱の前に全を呼んだ。



「開けてもいいかな?」

「はい」

「じゃあ失礼して…ああ、服だね。これはクローゼットにしまおうか」

(きっと勝手にやっても文句はない子なんだろうけど…)



 無関心、なんて聞いたら下手したら片付けもしないかも、と思いこうして手伝っている永久。それはまさに図星で、永久が言い出さなかったらやらなかっただろう。
 テキパキと動く永久の横で、全はのろのろと同じ動作を真似ていた。それがなんだかおかしくて、永久はついクスリと笑ってしまう。


(何もしない、ってわけじゃないんだ…)


 いえば、やるのかもしれない。服を片しながら全の様子を見て永久はそう考えた。そして一つ目の箱が終わる頃部屋にチャイムが鳴り響き、望が帰ってきたことを知らせる。永久が出れば大量のパンを持った望がそこにいた。


[*前へ][次へ#]

13/81ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!