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10 入寮
 なっ!キラキラと眩しい笑顔で全を振り返る望だったが、当の本人は全く動じてない。クラスにいく前に工藤にいわれた通り、教科書をとりにきただけなのだ。2人して苦笑いをし、教科書を渡せば全は頭を下げて出て行ってしまう。

 望もあとを追い、荷物を少し持って寮まで案内することにした。今朝とは違いたくさんの人がそれぞれの寮へ帰って行くこの通り道。部活はまだ始まっていないのか校庭はガランとしていて、どこかもったいない気分になってくる。



「な、全はなんでこの学園のノーマルを選んだんだ?」

「……」

「オレはさ、暴力とか嫌いでさぁ。みんなで楽しく過ごしたいじゃん?」

「そう」

「ぅ゙…そうッス…。あっ、ここが寮な!ホテルみたいだけど寮だから」



 ドンッ、とそびえ立つホテルのような建物。入口は1つしかなく、どちらかというと横に長い。見上げれば3階から上はベランダがついていて、中には洗濯物を干している部屋もある。だが全は見向きもせず中に入っていき、足を止めた。

 興味を引いたものがあったわけじゃない。知らないところにきたため、何をすればいいか分からなくなって動きを止めたのだ。だが人には聞かないあたり、マニュアルにないことを要求されたロボットのようだ。望はそんな全の腕を掴み、入口左にある受付へ近づいた。



「もう先に帰ってるといいけど…ヒロせんぱーい!いますかーっ?」

――シーン…

「ヒーローせーんーぱーいっ」

「何や騒々しいな…何しとんそこで」

「…ぁあっ、ヒロ先輩!まだ帰ってなかったんですね。よかったーちょうど帰ってきて」

「ワイに用かいな?」



 なんや?と関西弁の男は首を傾げた。こちらも金髪だが髪は赤いカチューシャで後ろに流されており、背もそこそこ高い。そしてまたもや顔の整ったイケメンだ。望とは既に知り合いなのか、ワシャッと髪を撫でて隣の全を見た。

 そして残念そうに首を振った。



「もうちーと綺麗にせな、相手は出来ひんなぁ」

「ちょ、違いますよ。外部生で今日きたらしいんで、ヒロ先輩に挨拶をと思って連れてきたんです」

「ああ、そういうたらそんな話もあったなぁ…まぁ中入りぃ」

「はーい、いこうぜ全」

「はい」



 いいお返事、ではないが腕を引かれるまま全も男の入っていった部屋に入る。そこは、寮長室。何を隠そうこの男、Gの寮長を務めているのだ。なにかあればこの人に、と皆入寮のときにいわれている。



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あきゅろす。
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