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4月30日 GW2日目
 ゴロゴロゴロ。永久は大きなキャリーバックを持って、寮の裏門までやってきていた。スラッとしたパンツにYシャツとベスト。顔が綺麗だからか女性的な服装にも見えるが、家へ帰ろうとする永久の表情は引き締まっていて男らしい。

 永久は外へ出て一度振り返り、見送りをしてくれた望と全に向き直る。



「見送りありがとう。それじゃあ、またね」

「気ぃつけて帰れよー。ほら全も」

「…ま、たね」

「うん、いってきます」



 …なんて、家に帰るのだからその表現は少しおかしいのかもしれない。だが見送ってくれる2人を見たら、『帰る』のではなく『少し出かける』の方が永久にはしっくりきてしまったのだ。またここへ帰ってくるから、待っててね、と。

 望に後ろから抱き込まれて、手をとられてヒラヒラと振ってくれる全に永久も手を振り返し、そばで待機していたタクシーへと乗り込んだ。あっという間にその車は見えなくなってしまう。



「…うし、じゃーとりあえず部屋戻るか。あ、オレの部屋寄ってゲーム持ってこうぜ」

「うん」

「今日こそ一緒にやろうな。また一から教えてやるしさ」

「うん」

「全と永久と、3人でプレイ出来たら楽しいだろうなぁ」



 今までにも何度か全にゲームを教えてきた。だが結局頭には入ってなかったらしく、ゲームを持ってきてもするのは望1人。永久も好き好んでゲームをするようなタイプじゃないため、いつも寂しーくプレイしていたのだ。

 けれど今はGW。時間もあるし、せっかくだからもう一度教えてみようと望は考えた。一度望の部屋に寄って、ゲーム機を持ち出してから全の部屋へ向かう。



「オレが1人部屋ならなーオレの部屋でやんだけど」

「……」

「まぁ、紹介してくれっていってるし、そのうち紹介するな」

(もっと全が感情出てきたら、だからいつになるか分かんねぇけど)



 永久に比べ、交友関係の広い望。本当は全を紹介し、全に友人になってほしい人がたくさんいるのだ。だが今の全は今まで知り合った人を認識しているかすら怪しいため、望はそれを控えている。

 また今度。そういって全の手を引き、彼の部屋へ入る。



「よーし、どれからやるかぁ!」

「……」

「…全くーん、やる気ありますー?」

「…さあ」

「うん、分かってたけど…オレってハリキリすぎなのかな」



 ゲーム機をセットしてテレビの前を陣取る望に対し、テレビから一番離れたところに座る全。


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あきゅろす。
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