2 キレるか、キレるのか。誰もがそう思っていたとき、屋上へまた新たに人がやってきた。それは全のように弱そうな生徒ではなく、いかにもな生徒。真っ先に基也のいる方へ向かって駆け出した。 『西さん!コーヒーお待たせしまし…た?あの…何スか、コイツ』 「…さぁな。おい、釣りはいらねぇからとっ『テメェ何モンだああ゙?…西さん!今俺が追い払いますからねっ』…はぁ」 『おい立てチビ!どこの回しモンだ!』 「……」 その男は基也の "自称" 舎弟らしい。食後の飲み物を買いにいっていて、帰ってきてみれば見知らぬ者が1人、座っていて。今まで見たことのなかった生徒に、舎弟は威嚇した。全は目をパチクリさせて舎弟を見上げる…が、興味がないのかすぐに視線をそらした。それが舎弟の怒りを煽る。 『いい度胸じゃねぇか…テメェごときが西さんに近づくなんざひゃ「待て」…ウスッ』 「……いいんだ、ほっとけ」 『え?でも…』 「騒ぐな、うぜぇだろ。もう戻れ」 『っ…はい…』 「ああ、…コーヒー、サンキューな」 ひょい、と少し持ち上げてお礼をいう基也。笑顔はないものの、気持ちがしっかり伝わってきた。こういったところがまた人に…不良に好かれる要因なのかもしれない。舎弟は嬉しそうに笑みを浮かべ、元気よく屋上から去っていった。 唖然とする生徒たち。その舎弟にではなく、全に、だ。あの西基也が全がそばにいることを許した。それは、彼の性格を知らない生徒にとってとても衝撃的なことなのだ。きっと誰もが思っただろう、『アイツは何者だ』と。その後予鈴と共に全は教室へ戻っていったが、この日のことは、一瞬にして全校に回ることになる。 [*前へ][次へ#] [戻る] |