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「地元…遠く?」

「せや。関西やし、時間かかるやろうな」

「…そっか…」

――しゅん…

「やから、ワイとおいで、全チャン」



 一緒に関西へいき、一緒にお店をやろうじゃないか。弘人はそう誘っている。遠くへいってしまうことに落ち込んでいた全は顔をあげ、じぃーっと見つめ、そして首を横に振った。ふるふる、と緩く振られる首に弘人は少しだけ意外そうに「何でや?」と聞いてきた。



「だって、弘人先輩みんなにいってそうだもん」

「…あ゙ー…」

「でも、夢があるのって凄いなーって思うの!お店、絶対いきたいですっ」

「はは、さすがやわぁ。かなわんなぁ全チャンには」



 夢は本当、でもお誘いは…冗談。きてくれたらきてくれたで嬉しいのだろうが、かといって全だけを愛すタイプではない。弘人は誰か1人を好きになるタイプではない、それは自分自身が一番よく分かっている。だから、このお誘いももう二桁目。

 全のことはもちろん好きだ。けれどそれは、下心丸出しの、好き。



「ま、店出来たら招待するさかい、そんときは食べにきてやぁ」

「絶対いきます!えへへ、頑張ってね弘人先輩っ」

「ああホンマ惜しいわ…どや?最後にワイと遊ばへん?」

「うぇ?あ、いいで『ちょ、寮長!そろそろ引き継ぎの続きを…っ』」

「ちぇっ、堅いなージブン。もっとかわええ子に手取り足取り腰取り引き継ぎたかったわ」



 アソビの意味が全と弘人ではまったく違うのが一目瞭然だ。全に緊張して黙って見ていた新寮長はそこで慌てて間に入り、ぶつぶつ文句をいう弘人にほんの少ーしだけ冷たい目を向けた。

 全は「いいのかな?」なんて顔をしながらも2人に手を振り、部屋へと帰っていった。



(夢、夢かぁ…)


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あきゅろす。
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