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 ずっとそばにいたら、もっと体に触れたら、犯してみたら。一体どうなるのだろうかと、欲が膨らんでいく。だがあれだけでは湧き上がる力もすぐに萎んでしまい、男は再び布団に潜ってしまった全ともう一度キスをしようと、手を伸ばしてきた。

 …ところへ、勢いよく扉を開け、別の人が入ってきた。



『今すぐ出ろ、今すぐだ!』

『っ、…はっ!』

『何を考えてるんだクズが…っ』

『いや、しかし、何も力の使用を強要したわけでもないですし、あれくらいは…』

『そうして追い詰めて死なれたらどうするんだと聞いている!』



 男を連れ出し、カメラ越しに見ていたことを咎め、叱る。そこまで身分の高いわけではなかったらしい男は頭を垂れてうなだれ、全との接触禁止を命じられてしまった。

 世話役に、とつけた2人が1日のうちにお役御免となった。次は男ではなく女をつけようか。そう考えていると、上層部の1人、高嶋が近づいてきた。



『高嶋さん、すみませんでした。…森羅万象はまだ食事に手をつけていないようです』

『そうか、それは困った。死なれては困るし、かといってBのような無理やりな従わせ方もしたくはない』

『そうですよね。出来ることなら、我々Hに共感してほしいです』

『ああ、そのためにはもっと懐柔せねば。どうだろうか。女性を使うより、歳の近い者を使ってみては』



 その言葉に、は?と、ちょっと意味が分かりませんというように返事を返した。高嶋はクスリと笑顔を浮かべ、一つ提案をする。『私の息子を使ってみては』と。



『翼くんを、ですか?』

『アレはレベルも高く私に似て賢い。いざという時は冷徹になれる心も持っている。使ってみる価値はあるだろう』

『た、高嶋さんが仰るなら…』

『年が近ければ気を許すこともあるだろう。明日朝一で連絡を入れておくように』



 母親似の翼とは似ていない容姿。けれど嘲笑うようなその笑みや姿、雰囲気は翼がするものに酷く似ていた。いや、翼が似てしまったのだろう。息子をアレ呼ばわりし、使え、と物のように話す高嶋父に、男は少し背筋に冷や汗を流しながらも、深く頭を下げその場を去った。

 能力のレベルも高く森羅万象を守る力もある。冷静な心と賢い頭脳もあり、父のあとを継ぐものだと子供のころから思い育ってきた息子。今こそ使い時だと、高嶋父はそう思っているのだろう。子供は、大人の見ていないところで成長していることに気づかずに。

 さぁ、これが吉と出るか凶と出るか。ぜひ、吉と出てほしいものだ。


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