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11月13日
 コンコン、控え目にノックがされ、全を閉じこめている部屋に男が1人入ってきた。布団の中でビクリと震えた全は出てくることはなく、耳や神経を研ぎ澄ませ相手の様子を窺う。おはようございます、声をかけ、テーブルに何かを置いた。



『朝食をお持ちしました』

「…いら、ない」

『食べて下さい。倒れられては困ります』

「やだ、…がっこ、帰してぇ…っ」

『ここが安全なんです、分かって下さい』



 ため息をつき、一口も手をつけられていない昨日の夕飯を男は回収する。ホテルの料理ともあって見た目も煌びやかでとても美味しそうなお肉料理。もったいないが、これは捨てることになるだろう。持ってきた朝食も柔らかそうなパンに色鮮やかなスクランブルエッグ、ベーコン、サラダにスープと、とても美味しそうだ。

 しかし、全は布団から出ることがないため、見向きもしなかった。



「知らない。ゃ…かえして、帰りたい…ぃ」

『…チッ、はぁ…』

「ふ、…ぅ」



 泣きたくても、ずっと泣いていたせいか涙すら出てこない。男が出て行ったあとガチャリと鍵をかける音がして、全は布団の中でやはりダメか、と落ち込んだ。恐怖からお腹は空いてこない。それどころかこの現状においての美味しそうな匂いは、吐き気をもよおすほど全に悪影響を与えていた。

 幸い、トイレとお風呂は部屋についている。トイレの鍵は全が閉じこもらないようになのか壊されているが、最低限の生活は送れそうだ。いや、Hとしては最高のおもてなしをしたいのだが、今の全では受け入れてくれないだろう。まずは懐柔することが先だ。

 そして、お昼。三度ご飯を持ってきた男は、手がつけられていない朝食を見て、大きなため息をついた。



『食べて下さい。でないと倒れてしまいます』

「…ら、ない…」

『ガキだからって甘えやがって…いいから食べろ!』

――バッ

「ひっ!?…やっ、ゃ、…んぐっ!?」

『噛んで飲み込め、ほら!』



 布団を剥ぎ取り、怯える全を起こしてご飯を無理やり口に詰め込んできた。そうでもしないと全はこの先も食べないと思ったのだろう。森羅万象だからと下手に出ていたものの、子供相手にバカらしくなり、乱暴に、従わせるような口調で押し付けた…結果。



「っ、う、ぇっ」

『な…っ』

「ぇほっ、けほっ、…うぇぇ」


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あきゅろす。
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