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 逃がさないとばかりに強く握られた腕を振り回し、康也を睨みつける。その目は悲しさに揺らいでいて、だが優しさと強さも感じられる不思議な光を放っていた。

 余計、この手を離してはいけないと思った。…が、相手は紫煙だ。一度風林火山を潰しかけただけの実力はある。掴まれていた腕をひねり回し、相手の手の力が少し緩んだところで康也の腹部へ容赦ない蹴りを打ち込んだ。



「っ、…カハッ!」


「総長!」


「っ…俺のこと思ってくれんなら、もう俺に構うな!」


「「聡介(くん)!」」



 みんなの声が重なるも、聡介はカツラとメガネを持って生徒会室からいなくなってしまった…。残された康也たちは、どうしてあそこまで拒むのだろうかと納得出来ない顔をする。

 苦しんでいるなら助けたい。この愛を受け止めてほしい。そう、思った。

 だがこのときは追いかける者はいなく、聡介は適当にカツラをかぶりなおし、カバンを取りに戻って部屋へ帰ってしまった。その綺麗な顔を、今にも泣きそうに歪めながら。







 翌日、聡介は今まで通りカツラをかぶって部屋を出た。オタクスタイル。だが昨日食堂でバレたということもあり、皆が聡介を指差して密かに騒ぎ立てた。


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