16 「っ…そ、そんなつもりでやってねぇ!謝らないからな…一生仕事でもしてノイローゼにでもなれバーカッ」 「あ゙っ、テメェ逃げんな!」 その言葉は、既に逃げ終えたあとの聡介には届かなかった。 走って逃げ、エレベーターからおりたところでようやく一息つく。だがそんな聡介の前に、ちびっこい奴らが現れた。唯一聡介の敵になっている、会長の親衛隊だ。 『ほんとにすぐ降りてきたし…』 「…んだよ」 『偉そうな口聞くな!明石様や他の皆様に媚び売ってあまつさえ構ってもらうためにわざと逃げたりして…』 『ウザイんだよ!あの方たちはお優しいからわざわざあんたに付き合って下さってるだけなんだからなっ』 「……」 キャンキャン、キャンキャン。 吠える子犬たちに、聡介は思った。 「これだよ…これでいいんだ、こうでなきゃ」 『『…え?』』 「はっ、好きならテメェらが告白ぐらいしてみろチービ!んでさっさと捕まえて俺らに近寄らせるなっ」 『なぁっ、生意気な…!』 …けれど、隊長である真央は気づいてしまった。これだ、なんていいながらとても悲しそうな顔をする聡介に。いや顔はよく見えない。だが雰囲気が "寂しい" と語っていて、なぜだかこれ以上責める気が起きなくなってしまった。 「他の隊のやつらにもいっとけ!悔しかったらイジメでもなんでもして取り返してみろってな!」 『……』 「な…なんだよ、なんかいえよチビッ」 『ちょっと…やる気なくした。今日はこれで勘弁してあげるよ』 「え…?」 『大人しくしてればこっちだって手は出さないんだからねっ』 それは、忠告なのかアドバイスなのか。結局せっかく久々の制裁になるかと思っていたそれは、何事もなく終わってしまった。 1人残された聡介は、呆然と立ち尽くす。こんなはずじゃないのに…と。そして焦るのだ。早く嫌われて1人にならないと、周りが危険な目に合ってしまうから…。 戸惑い。終わり [*前へ] [戻る] |