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「んで、名前なんだったか」

「つ、堤理央…です」

「あぁそうそう。理央、だったな。俺は墨村統司だ」

「たっ、担任の先生、ですよね?」

「2組、数学担当だ。なぁお前…実は敬語とか使わねーやろうだろ」

「ナニイッテルンデスカ年上には使います」


 どこぞの常識知らずじゃないんだから、使うに決まってる。けれど、それでもここまで堅苦しいものじゃなく、大概が敬語じゃなくていいというのであまり使わないのも確かだ。

 なぜか笑顔で迫ってくる墨村を、理央は後ろに下がりながらどう回避しようかと必死に頭を回転させた。…が。


――トン

「…あ…っ」

「クク、もう下がれねぇなぁ…っと、おー?」

「うぇ、な、なんですか…?」

「理央、このメガネ外してみろよ」

「は?!やだよっ……って、あ゙」


 またやった…!と、壁と墨村に挟まれながらも、理央は一瞬思考を飛ばした。…その瞬間、耳に違和感を感じ、ふ…と墨村の方を向いて理央は唖然とした。


(…あれ、え、メガネは…?)


 あんなに見づらかった前が今はハッキリと、そう、驚きに目を見開く墨村がハッキリと見えるではないか。ええっ、と焦りを見せる理央は、墨村の手にメガネがあるのに気づいて手を伸ばした。


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