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心の中でムスッとする克己に理央は気づかずに、己のクラスへと戻っていった。まだ開祭式の最中ということで戻ってきている生徒は少なく、クスクスと影で笑う声が理央の耳に入ってくる。
全員に大声で笑われるのもムカつくが、少人数に小さく笑われるのも心なしかキツいものがある。…そして待つこと10分、ようやく式も終わり、本格的に祭りは始まった。
『メイド執事喫茶でーす!』
『ぜひ寄ってって下さーいっ』
「うわーさっそくかよ。やる気凄いな」
「……ん」
「…ああ…きたよきた…とりあえず混むまでは奥にいていいかな、いいよな」
「ダメ。…置いてか、ないで」
意気揚々とメイドたちが呼び込みを始め、それに釣られて生徒がクラスの中へと入ってくる。それでもまだ混むほどではなく、いたたまれなくなった理央が逃げようとした。…のを、克己が腕を掴むことで引き止める。
垂れ下がった耳と尻尾が見えるようで、なら一緒に…といおうとした理央を遮り、クラスメートが声をかけてきた。
『あのっ、赤塚くんこれあそこのテーブルお願いしますっ』
「……チッ」
『っひ!…あ、赤塚くん指名してる、んですぅ…』
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