人質
「ペンペンー…っと、ん?」
――カサ
(…手紙、か?)
筆箱を取り出そうと机の中を漁れば、身に覚えのない1通の手紙。6月も末、本格的に創立祭の準備期間に入ってしばらくしてからのことだった。
また親衛隊からか、いつの間にこんなもの。思うことは色々あったが、理央はとりあえず中身を確認してみる。
【友人を助けたければ今から1人で、6階の視聴覚室にこい】
「……は?」
(友人…て、伊織?)
んなまさか、今は準備中でクラスにいるはずじゃ。そう思うものの、これを入れられたのが今日の午後になってからというのを踏まえると、どうにも無視は出来ない。理央は心配になって伊織の携帯へ電話をかけた。
――プルルル、プル、
「あ、いお」
『おかけになった電波は、現在、電源が入っていないか…』
「え…え、伊織?なん、…繋がんねー」
あの伊織が携帯の電源を落としてる?いや、常に写真を撮っていることを考えると、ありえない。そしてこの学園に電波の届かないところもない。…となると、故意に切られてしまったとしか、考えられないではないか。
この手紙は本物だ。そう確信した瞬間、サーッと血の気が引いていき、フラリと後ろへ倒れそうになった。
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