秋空と椿 ――クイッ 「………ん、」 「(う、え)?」 「………屋上」 「…!(わぁーっ)」 「え、モ…ミ、ジ?」 屋上と聞いて目を輝かせる紅葉に、蓮見は嫌な予感しかしない。そしてその予感は見事当たることになる。急いで打たれた携帯の画面には、【いってくる】の文字。 蓮見が、一葉たちが止める隙もなく、紅葉は音楽室を出て行ってしまった。パタパタと可愛らしい足音をたてて階段をのぼり、鉄の扉を見つけて開けてみる。 ――ギィ…ッ 「っ…ふ、ぁ…!」 (お空がちかーいっ) 「ん…はら?紅葉チャンやん、どないしたーん?」 「っ、(えへへっ)」 一面の澄んだ空を遮るものはなにもなく、少し肌寒いが心地いい風が頬を撫でる。決して圧迫感はなく、だが手が届きそうなほど近くに感じる空に、紅葉はキラキラとした顔を見せた。 そして大の字に寝転がっていた椿に笑顔で近寄り、紅葉もその横にパタンと寝転がってみる。さり気なく椿の腕を枕にして。 「はは、なんやーかわええなぁ」 「(きれーい)」 「今日はエエ天気やし、気持ちエエやろ」 「っ、(コクッ)」 「うは、くすぐったいわー」 [*前へ][次へ#] [戻る] |