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 そういって椿は桐の携帯を菖蒲に渡し、一緒に桜並木道まで出た。寮はもうすぐそこにあり、椿は菖蒲の背を押して、早く会いに行くよう促してあげる。


(っ…僕、結局なんの役にも…!)

(あーあ、なんや桐ばっかええカッコしぃやなぁ)


 外部から障害編入としてやってきた紅葉。彼の人柄なのか、始めは物珍しさからだったのか関わるようになり、今じゃみんなが紅葉に好意を寄せている。今だって、みんな必死になって探し回っていたのだ。

 …なのに。一番興味のなかった男が、一番彼に影響され、そして一番に紅葉を助けにいった。無事だったのは喜ばしいことだが、少し悔しくも寂しくもあるのは、なぜだろうか…。


「はぁ…こないな奥におったんか」

『うぁあ゙、っあ、お…ぐら様ぁっ!』

『は…っ、くそ、もう…!』

「あーエエ、エエ。俺待ってたるさかい、さっさと終わらしぃ」

『『……え?』』

「紅葉チャン怖い目ぇ合わせたんやもん、これくらいのこと、覚悟してたんやろー?み・の・わチャン♪」


 タノシソウやねーと無に近い笑顔で、目の前で繰り広げられている光景を見やる椿。



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