間に合った、けど
上からどいた男のおかげで見えた鮮やかな髪に、今度は安堵から涙が零れ落ちる。もう大丈夫だ、そう思ったら張っていた気が抜けてしまったのだろう。紅葉はそのまま気を失ってしまった。
最悪の事態は免れたようだ。…が、それで怒りがおさまるかといわれたら、そうではない。
「……ソイツからどけ」
『『は、はい…っ!』』
『っ、なぜですか!長谷川様はみんなの長谷川様なのに…っ、どうしてソイツだけっ』
「………」
焦り、戸惑い、怒りながらもまだ喚くミカ様…もとい箕禍を桐はシカトし、地面に横たわる紅葉に近づいた。顔は涙でグチャグチャに濡れ、男たちが悪戯に引っかいたのか、白い肌に赤い線がいくつか。
桐は自分の着ていたカーディガンを紅葉にかけ、ゆらり、と立ち上がった。無表情なそれは、彼らの恐怖心をさらに煽る。
「どうしてだと?…なら聞くが、なぜ俺様の交友関係をテメェらに決められなきゃいけねぇんだよ、あ゙?」
『っ…そ、ソイツは皆様に媚びを売って誑かしているのでしょう!?編入生の、喋れない顔しか能のないただのガキのくせに…!』
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!